研究課題
今年度の成果は主に以下の3点に集約できる。1)乳児における公平感のデータ収集の完了:昨年度は、エージェント(幾何学図形)の行為(援助行為または妨害行為)に応じて、それらのエージェントが資源の分配を行ったとき、善悪の社会的評価と関連付けて分配行動を予測できるかの検討を、期待違反法を用いて行った。今年度は、さらに参加児数を増やし、結果の補強をはかった。その結果、援助行為を示したエージェントが不公平な分配を分配をしたときに注視時間が長くなった。すなわち、乳児は、善い行いをするエージェントは公平に分配すべきだと考えているらしいことがわかった。一方、妨害行為を示したエージェントの分配に関しては、特に差は認められなかった。またコントロールとして、先行刺激として、ポジティブ・ネガティブの状況を呈示するだけでは、エージェントの分配行動に対する反応には差が認められない傾向があった。2)成人の公平感に対する感受性の脳内基盤の予備的検討:1)で使用した刺激を成人に呈示し、そのときの脳波(ERP: Event Related Potential)を予備的に検討した。現在、データ解析の途中であるが、helper fair条件とhelper unfair条件で、脳波パターンに差が出そうである。今後さらに、N数を増やし解析を行う。3)公平感と向社会行動の発達的連関:1)で実施した実験の参加児を対象に、参加児が2歳時点で、向社会行動のテストを行った。今年度は、向社会行動の妥当性を検討するために、2~3歳児を対象に、Pen taskを実施した。これは、実験者がペンを落としてしまう、それを参加児が自発的に拾ってあげるか否かをテストする課題であるが、すぐに援助する参加児もおり、課題としては適切であることが認められた。また、すでに検査の年齢に達している1)の参加児にも実施を開始した。
2: おおむね順調に進展している
研究当初の目的である、乳児における、文脈に応じた分配行動の理解に関する実験を、さらに参加児数を増やしてより堅固な結果を得て終了した。また、あら新たに浮かび上がった統制条件の必要に対応した実験もほぼ終了し、現在データを分析している。さらに、公平感の神経基盤に言及するという当初の目標に対応して、まず、ポリメイト2を用いて、成人のERPデータ収集の予備実験も実施できた。また、そのデータにより、条件に応じて明確な差が認められそうとの感触を得た。現在は、被験者数を増やしてさらに検証を進めている。また、このデータを基に、乳児の脳波計測の計画も進展しており、分担者の豊橋技術科学大学の北崎氏と具体的に装置の準備などを進めることができた。乳児用の脳波計測装置を京大に移送できれば実験開始可能状態になっている。本プロジェクトの中核をなす課題の、公平感と向社会行動との発達的連関に関する縦断研究であるが、乳幼児の向社会行動能力を計測する一連の課題を入手し、課題の実行可能性を検討したところ、2~3歳児に対して実施可能であることを確認した。すでに、数人の該当児を対象に、pen taskを実施した。以上のことから、本研究課題の計画は、概ね順調に達成されていると考える。
本研究計画は、概ね順調に進行している。今後は、発達初期の公平感の理解と後の向社会行動の発達との関連の縦断的データの取得に努める。現在は、pen taskのみの実施となっているが、年齢に応じた複雑な課題もすでに準備しているので、それも実施する。また、さまざまな社会的文脈に応じた公平感の理解をさらに検討するために、新たな文脈を加え、公平感との関係を探る。成人における公平感の脳内基盤に言及するため、脳波計測(ERP)を継続する。これは、既存のポリメイト2で実施可能であることを確認しているので、スムーズに実施可能である。また、乳幼児の脳波計測についても、分担者との連携により、実施可能となっている。また、公平感の文化比較の研究については、今年度から開始を企図しているが、連携研究者との計画遂行に関する打ち合わせ会議を予定しており、まず中国での実験が実施可能と思われる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 10件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件)
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