視覚刺激の点滅に同期させて、音を左右の耳から交互に提示し、点滅刺激が左右に動いているように見える時、音を左右どちらか一方の耳にだけ提示し視覚刺激が単に点滅しているように見える時、および、点滅の位置を変化させて仮現運動が見える時の3条件について、脳活動をfMRIで測定した。その結果、仮現運動が見えているときには、側頭葉のhMT野が強く活動し、視聴覚情報統合によって点滅刺激が動いて見えているときにもhMT野に活動が観察された。この結果、音によって視覚刺激が動いて見える現象が、聴覚系の活動が視覚系の働きを修飾していることに起因することが示唆された。 音によって点滅刺激が動いて見える現象の責任部位を明らかにするために、残効法(De-activation)を使ったfMRI計測を行った。仮現運動刺激に対する脳活動を測定した後に、音によって動いて見える視覚刺激を複数回提示する。その後に改めて仮現運動刺激に対する脳活動を測定する。2つの刺激に対して同じように働いている部位は、繰り返し活動しているため2度目の仮現運動刺激に対する活動が低下するが、個別に働いている部位は同じように活動するだろうと予測した。仮説を支持する結果が得られているが、統計検定を行うためには、被験者数を増やす必要があり、現在も、継続している。 事象関連電位を用いた視聴覚統合の研究は、仮現運動刺激と学習性の音―視覚刺激の対連合刺激を用いて、脳波を測定した。音による視覚刺激の動きに順応させる以前だと、仮現運動刺激と学習性の音―視覚刺激の対連合刺激を使ったOddball 課題で、明瞭な視覚性Mismatch Negativityが観察された。しかし、対連合に順応した後ではMismatch Negativityが消失した。この結果は、順応によって正の残効が形成されたため2種類の刺激を弁別することが困難になったことを示している。
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