最終年度である2016年度は、多様性と民主主義という視点に立った、3つの、シティズンシップ教育の類型を解明するために、①シティズンシップ教育といろいろな教科領域での教育との比較、②米国や英国での比較研究、③それらをまとめ、海外での成果発表を行う。また、シティズンシップ教育を日本型、アジア型、欧米型に類型化し、各型の構造と原理を析出し、グローバルな共通性とそれぞれの地域の固有性を解明することを達成することにした。 そのために、シティズンシップ教育と関わりが深い歴史教育を題材にして、シティズンシップ教育と他領域との関連を米国の研究者と、2016年5月28-29日、東京(キャンパスイノベーションセンター東京)、6月2日、広島(広島大学)で、また、2017年2月15日、英国とマルタの研究者と、広島(広島大学)で、国際講演会を開催した。これらの国際会議を通して、英米との比較研究を同時に行った。 また、シティズンシップ教育と哲学や政治学との関連に関して、英国の研究者を招聘し、日本の研究者との国際セミナーを、2017年1月7日に、東京(キャンパスイノベーションセンター東京)で、1月9日に、福岡(九州大学)で開催した。 これらの国際会議とセミナーにより、シティズンシップ教育の類型化とその特質の解明を図った。その結果、共通性として、コモングッド(共通善)の探求、つまり、各国・地域を超えてどこでもだれもが人(類)としてもつべき「普遍的価値」を育てることを目指しており、それを支える哲学的政治学的立場として、共和主義を保持していることを明らかにした。また、それぞれの国や地域の固有性もそこでは働いており、たとえば、道徳性との関係でみれば、英米ではキリスト教的価値やその倫理が、アジア、日本では仏教的価値やその倫理がその基盤を作っていることを見出した。
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