研究課題/領域番号 |
25246001
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
丹司 敬義 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (90125609)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 位相微分電子顕微鏡 / 表面・界面 / 生体材料 / 燃料電池 |
研究概要 |
通常の透過電子顕微鏡では、量子力学の教える通り、透過電子波の強度(振幅)のみが観察でき、その位相の情報は失われてしまう。そのため、生体試料や電磁界等、電子の位相のみを変調し、振幅にほとんど影響を与えない物体(位相物体と呼ばれる)は、一般に、焦点を大きく外すことによって位相の情報を振幅に変換して観察されている。従って、得られる像の分解能や画質は装置の持つ本来の能力に対し十分なものとは言えなかった。本研究では、厚い試料の観察に有効ながら、生体材料や高分子材料、あるいは電磁界等の位相物体ではよりコントラストがつきにくい加速電圧1000kVの超高圧電子顕微鏡を用いた位相微分干渉顕微鏡法を開発する。そのため、本年度は、磁性細線周囲に生じるベクトルポテンシャルを用いた位相板を新しくガス環境その場観察超高圧電子顕微鏡に導入するための専用位相板ホルダーを作製した。 また、位相板に用いる均一な磁性極細線を作製した。細線は、Wollaston法で作製された直径約0.65マイクロメータの白金線を用いる予定であったが、実際には直径1マイクロメータのものしか入手できず、予定より少し太いものとなった。この白金線に強磁性金属として、パーマロイとNdFeB、および、SmCoをマグネトロンスパッタ法で蒸着し比較した結果、一度消磁したSmCoを蒸着し、作製後再度着磁したものが最も適していることがわかった。 予備実験として、作製した細線位相板をを200kV電子顕微鏡に装着して、カーボン薄膜、大腸菌、臍帯上皮細胞等を試料にして位相微分像を得ることが出来た。 また、燃料電池その場観察用試料ホルダーの設計指針とその問題点を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超高圧電子顕微鏡用位相板ホルダーを開発た。1000kV電子顕微鏡での実験はまだ実施できていないが、200kV電子顕微鏡を用いた実験で、位相の微分像が得られ始めた。また、A-B効果を用い微分位相像の検討を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
現在提供されているWollaston線は公称直径0.65マイクロメータと言うことであったが、実際にSEMで測定してみると直径は1マイクロメータある。この細線は、現在全て輸入品であるが、出来るだけ細い白金細線が得られる様、他のルートを探す。同時に、超高圧電子顕微鏡への装着を進め、超高圧位相微分電子顕微鏡法を確立する。また、白金細線に蒸着するSmCo合金の厚さと細線両側に生ずる位相差との定量的関係を詳細に調べフィルター作製の精度と効率の向上を目指す。 現在は、予備的に加速電圧200kVの電子顕微鏡の対物レンズ後焦点面近傍にフィルターを入れているが、やはり、レンズの磁界の影響を受けている様に思われる。対物レンズの後段にあるミニレンズを用いて磁界のない位置でフィルターを挿入することが出来るJEM-1000KRS超高圧電子顕微鏡では、より良質な位相微分像が得られるものと考えている。 同時に、固体燃料電池その場観察用試料ホルダーの開発を進め、酸素雰囲気中高温でモデルセルに電圧を印加しながらその界面における構造変化を観察する。超高圧電子顕微鏡用ホルダーが完成するまでは、200kV電子顕微鏡によりその場観察実現の可能性を探る。
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