研究課題/領域番号 |
25246006
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
真庭 豊 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (70173937)
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研究分担者 |
萩原 政幸 大阪大学, 理学研究科, 教授 (10221491)
柳 和宏 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (30415757)
坂本 浩一 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (90187047)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 熱電物性 / ゼーベック / 水 / グラフェン |
研究実績の概要 |
グラフェン、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、およびサイズや積層構造などが異なる多様なナノ炭素の構造と物性をX線回折実験、核磁気共鳴(NMR)実験、磁化測定、熱電物性測定、分子動力学計算、電子状態計算などの手法を用いて研究した。特に以下の点が明らかになった。 1)有限サイズの多層グラフェンの構造評価:粉末X線回折法は固体の構造を評価する標準的な方法の一つであるが、有限サイズのグラフェンでは、従来の手法では必ずしも精密な情報が得られない。本研究では、数値計算法によりX線回折パターンを計算し、多層グラフェンの有用な構造評価法を提案した。2)SWCNTフィルムの熱電物性:SWCNTフィルムは、フレキシブル熱電材料として優れた性質を示す。本研究では、金属型と半導体型が混在したSWCNTフィルムの熱電特性を調べ、フィルムの熱電物性が、金属型のわずかな混入により著しく変化すること、混合フィルムの場合、それを構成しているSWCNTの平均直径にゼーベック係数がほとんど依存しないこと、1次元バンドの多重度を利用して高濃度キャリアードーピングにより優れた熱電特性の発現を期待しうることなどを実験的および理論的に明らかにした。3)SWCNTフィルムの熱電物性への水吸着の効果:SWCNTフィルムを水を含んだ空気中に置くことにより、その熱電物性が顕著に変化することが分かった。その原因として、水がホールドーピングを誘起することが示唆された。4)SWCNTに内包された水:直径が大きいSWCNTでは、室温近傍で内包された水が、温度の低下によりSWCNT外部に排出されるwet-dry転移を示す。本研究では、その機構解明のため分子動力学計算とX線回折法を用いて調べ、SWCNT細孔の性質が温度低下により、より疎水的に変化する傾向が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)SWCNTの熱電物性の理解が順調に進んでいる。 2)SWCNT に内包された水のwet-dry転移機構などについての理解が順調に進んでいる。 3)ナノ炭素の複合化による新規物性について、水雰囲気によるSWCNTの熱電物性の制御に関する新知見が得られた。また、多層グラフェンなどについては、サイズ効果による構造相転移の可能性も示唆され、新規物性の発見が今後期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)SWCNTの熱電物性について、熱伝導度を含む物性量について総合的に評価し、実用レベルのSWCNTフィルムの開発を目指す。SWCNTフィルムの熱伝導度の評価法についての研究は順調に進行している 2)SWCNT内の水の物性に関しては、ダイナミクスの研究が十分ではないため、この点について、核磁気共鳴法や分子動力学法を用いて重点的に研究する。 3)ZTCなどの1次元細孔以外の細孔系内に物質を閉じ込めた系において、新規物性を探索する。 4)これまでの低圧力下の実験を高圧力下に拡張し、新規物性探索と物性発現機構を調べる。
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