研究実績の概要 |
前年度までに金属溶湯脱成分法で作製されるナノポ-ラスSiには前駆合金由来のMgと金属浴成分由来のBiがn型ド-パントとして存在しており(「不可避ド-パントと呼ぶ)、それらがSiの電気伝導性を向上させていることが明らかになった。この結果を基にして本年度ではナノポ-ラスSi中のド-パントを制御する手法を検討した。前駆合金Mg-(Si,D)(D:ド-パント)をBi金属浴に浸漬して脱成分する際にBi浴中に溶出しないDを平衡状態図や混合熱を参考に検討し、DとしてP(n型)、Al(p型)を注入することにした。これらのDを注入したMg-(Si,D)前駆合金をBi金属浴中で脱成分処理したところDが注入されたナノポーラスSiが得られた。Siのポアサイズやリガメントサイズにド-パントはほどんど影響しなかった。ド-パントが注入されたナノポ-ラスSiをLIB負極に用いたところ、サイクル特性や容量の明確な改善は見られなかった。この理由は意図的にドープされたDが不可避ド-パントとキャリア補償を生じ、結果としてド-パント濃度が低下したためと考察する。従って、本プロセスを用いてSiにド-パントを注入する際には不可避ド-パントと伝導型が同じn型のド-パントを注入する必要があることが明らかになった。 国際共同研究においては、米国ブルックヘブン国立研究所シンクロトロンX線を用いて充放電を繰り返したナノポ-ラスSiハ-フセルの内部観察を行い、充放電に伴いSi活物質が微粉化していく様子や過剰なSEIの成長によるポアの消失が観察され、活物質の劣化の過程を明らかにすることができた。 また、本研究で開発されたナノポ-ラスSiを負極活物質として、リチウムイオン伝導固体であるLiBH4を電解質に用いることで、1000 mAh/g以上の容量を有する全固体電池負極の開発にも成功している。
|