研究課題/領域番号 |
25246010
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岡田 晋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70302388)
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研究分担者 |
山本 貴博 東京理科大学, 工学部, 准教授 (30408695)
松田 一成 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (40311435)
西永 慈郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 太陽光発電研究センター, 研究員 (90454058)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ界面 / シリコン空隙 / ナノチューブ / ナノ炭素物質 |
研究実績の概要 |
本年は昨年度に実施したC60とシリコンからなる複合系によって得られたナノ界面物性の次元性と形状依存性を明らかにするために、シリコン中に1次元のナノトンネルを構築し、そこにカーボンナノチューブを埋め込み、1次元のシリコン/ナノカーボン界面の構造探索を行った。その結果、カーボンナノチューブの挿入には適切なシリコンナノトンネル直径があることを明らかにした。また、カーボンナノチューブを内包することが可能な直径を有するシリコンナノトンネルにおいて、カーボンナノチューブの内包によるエネルギー利得がC60内包の場合に比べ非常に大きい値であることを明らかにした。また、詳細な電子状態計算の結果から、両者の波動関数が強く混成し、複合系の電子構造は構成単位であるシリコンナノトンネルとカーボンナノチューブの電子状態の単純な足しあわせではないこと、すなわち、ここの電子物性の特性を生かしたデバイス応用には非常に不向きなナノ界面系であることを明らかにした。また、前年度に引き続き、複合系に資するナノ構造炭素物質の構造と電子物性探索、ダイナミクスの解析をおこない、特に、電場下において多くのナノカーボン物質複合系が特異な電子物性を示すことを明らかにし、ナノカーボン物質とシリコン空隙からなる複合系において新たな物性現象誘起の可能性を秘めた構成単位の候補の提示を行った。 ナノ構造体の光物性探索においては、カーボンナノチューブにおいて、通常の発光現象とは大きく異なるアップコンバージョン発光(励起エネルギーより高エネルギーの発光が生じる)と呼ばれる現象を観測した。この特異な発光(蛍光)現象は、生体内深部の発光(蛍光)イメージングに非常に有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、シリコンとナノカーボン物質の0次元、1次元ナノ界面に対する物性の解明を終了しており、当該系に対する知見は概ね蓄積されるに至っている。一方、化合物半導体、たとえばGaNの場合については、その空隙の形状に依存した荷電状態の多様性から、その安定構造の決定、ならびに複合構造の安定性に対する知見の蓄積が遅れているのが現状である。また、実験的なアプローチ、特に光物性解明に関しては、当該系が非常に複雑な乱れた構造であることから、現状においてその進展があまりないのが現状である。なお、複合構造の合成/試料作成に関しては順調に行われている。以上の観点から、当該研究は、当初予定にたいして、若干の遅れを持って進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
GaAs, AlInP, 窒化物系へ C60 がドープされた複合構造体の物性解明を理論、 実験の両面から遂行し、基礎的な物性に関する知見の蓄積を行う。また、蓄積された知見を基に 0次元ナノ界面物性科学の創成を試みる。また、一連の C60/半導体複合構造体に対して、特に光 学特性に着目し、その物性をミクロスコピックに評価する。さらに、一連の複合系の吸収・発光 特性や光電変換の分光感度特性の評価を理論、実験の両面から遂行する。光学特性に対する知見を基に、C60 バルク半導体複合構造体の光電変換材料としての応用可能製 の評価とデバイス構造の提案、設計指針の提示を行っていく。とくに、高効率光電変換材料系へ の応用を念頭に置いて、光電変換効率、電流変換効率、エネルギー変換効率の評価を種々の構造 に対して実行し、目指すべきデバイス組成と構造の提案を行う。また、C60/窒化物半導体に対しては、レアメタルフリーの発光デバイスへの応用可能性を検討 し、デバイス設計指針の提示を行う。 他方、当該複合構造は、C60 が半導体、絶縁体に埋め込まれた量子井戸の様に振る舞うことが期 待されることから、電荷捕獲型の不揮発メモリ材料としての応用可能性を秘めている。その応用 において、C60分子の高い安定性と特異な電子状態は安定且つ多値メモリデバイス、スピンデバイ スとしての応用の可能性がある。本申請では、界面の電子物性、ドープされた C60 の電子物性に 対して得られて知見と、界面における熱物性に関する知見を基盤にし、C60ドープ半導体複合構造 を用いた電荷捕獲型の不揮発メモリのデバイス構造の提案を行っていく。
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