当初は平成28年度に終了予定の研究であったが、その最終年度内にハイドロゲル電極の保存のための乾燥・膨 潤実験を行なったところ、膨潤の際に臓器など へ付着する現象を発見し、膨潤による変形で固定できる可能性を見出した。この臓器への「 自己固定」は、電気的治療の低侵襲化を実現し 得る極めて重要な新機能であるため、研究計画であった関節部などの体表での節電計測に加えて、体内での医療応用の可能性を探るために、摘出組織を用いて体液膨潤による自己固定力の評価を行う必要が生じ、研究費繰り越しによる延長を行い、臨床医のアドバイスの下で摘出臓器による自己固定機能の実証を行うことになった。 その結果得られた成果は期待した以上であり、ブタの摘出臓器(脳・心臓・神経束)に対して複数の自己固定モードに関する原理実証、および固定力の定量評価を行うことができた。脳間隙へのゲル膨張による固定では、膨張圧力が2KPa程度、動摩擦係数が6mN程度であり、何れも脳に対して安全な値であることが示された。神経束への巻付きによる固定では、ゲルの膨張による締め付け圧力が300Pa以下であり、神経への直接的な巻き付けが問題なく行えることが示された。従来の神経カフ電極はプラスチックやゴムなどの比較的硬い材料が基材であるため、真剣に直接接触することが許されず、一定の隙間が設けられていたが、ハイドロゲル電極は直接接触可能な密着固定型の神経カフ電極のとしての応用が期待できる。
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