本研究の根本にある狙いは、電気的に材料の機能開拓を可能にする手段-電界効果-を、材料の枠を超えて活用し、省エネ・高効率な利用展開・材料間の融合的新機能の創発を図るものである。本研究では、中でも磁性体に注目し、特に、身近な金属の磁性を電界効果で自在に操る手法を確立し、その背景に眠るサイエンスの理解と応用展開を目指すことを目的としていた。具体的には、①電界効果により金属元素の電子数を変化させ、磁性が変化するメカニズムを理解すること、②天然には磁石として存在しない金属を電気的に磁石にすること、③磁場や電流に頼らない次世代の電気的磁気記録手法を探索・実証することを目指し、研究を進めた。基盤研究(S)の採択により、本研究が廃止となったため、実際の研究期間は5ヶ月程度であったが、下記の2つの内容について具体的な進展があった。 ●コバルト超薄膜に電界を印加し、その磁気異方性の変化を温度の関数として系統的に測定した。キュリー温度が変化するメカニズムと磁気異方性が変化するメカニズムの関連性を知る上で理解が進んだ。これは上記の①に貢献する結果であると考えている。 ●電界を加えることで、磁壁が移動するスピードを大幅に変えられることをこれまでに報告していたが、間接的な測定で磁壁移動スピードを求めなければならなかった。今回、透明な電極を用いることで、光学的に直接電界印加直下の磁壁移動を観測することに成功し、また磁壁の移動スピードを電界により100倍変えられることも分かった。これは上記の③に貢献する結果であると考えている。 上記に加え、招待講演1件を行った。今後、基盤研究(S)にて②を中心とした展開を精力的に進めていくつもりである。
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