研究課題/領域番号 |
25246020
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
浜屋 宏平 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90401281)
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研究分担者 |
斉藤 好昭 株式会社東芝研究開発センター, その他部局等, その他 (80393859)
澤野 憲太郎 東京都市大学, 工学部, 准教授 (90409376)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スピントロニクス / MBE / 金属-半導体界面 |
研究実績の概要 |
昨年度は、Si基板上に高品質形成したGe/Fe3Siの2層膜を、Cuを純スピン流チャネルとした横型スピンバルブ素子にデバイス化し、Fe3Si層からGe層へのスピン注入・検出の実証を検討した。上記の2層膜を横型スピンバルブ素子へデバイス化するための微細加工プロセスの開発から着手した。電子線リソグラフィーおよびAr+ミリングを用いて2層構造の電極に加工し、電極側面を絶縁するためのSiO2を堆積した後、Cu細線とオーミック接合した横型スピンバルブ素子を作製した。作製した素子のCu/Ge/Fe3Siの2端子抵抗は、測定温度の低下に伴って単調に減少した後、100 K付近で上昇傾向に転じた。比較として、Cu/Fe3Si素子と結晶Ge薄膜の抵抗の温度特性を測定したところ、Cu/Fe3Si素子は測定温度の低下とともに単調に減少したが、結晶Ge薄膜は測定温度の低下に伴って単調に減少した後、100 K付近で上昇傾向に転じた。これらより、観測された2端子抵抗はGe層が支配的であり、作製した素子がGe層を介した伝導特性を観測可能な素子であることが判った。次に、非局所磁気抵抗測定を用い、Ge層からCu層への純スピン流の伝導(スピン信号)の観測を試みた。その結果、50 Kの低温ではあるが、明瞭なヒステリシス信号を観測した。スピン信号の温度依存性から、観測されたスピン信号がGe層へのスピン注入によって得られた結果であることが示唆された。観測されたスピン信号の大きさは、Ge層を介していないCu/Fe3Si素子の低温測定の結果と比較すると、1桁以上小さな値であるが、CuチャネルとFe3Si層の間にトータルで約100 nmのGe層を含んでいることを考慮すると、純スピン流の生成・検出に成功していることは注目に値する。今回の結果は,縦型スピン注入・検出素子を実現する上で重要な知見を得たことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、これまで開発してきた強磁性金属上への半導体Ge薄膜成長技術[Cryst. Growth $ Des. 12, 4703 (2012)]を応用し、デバイス応用上必須であるSi基板上に、『強磁性金属/Geチャネル/強磁性金属』構造からなる縦型極短チャネルスピントランジスタを創成することを目的としている。 本年度は、これまでスピン伝導に関する知見が得られていなかった本構造において、Si基板上に高品質形成したGe/Fe3SiとCuを純スピン流チャネルとした横型スピンバルブ素子へとデバイス化し、Ge/Fe3Si界面を介したスピン伝導の観測に成功したことが非常に有意である。よっておおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Si基板上に形成したハーフメタル合金Co2FeSiを純スピン流生成源、Cuを純スピン流チャネルとした横型スピンバルブ素子において、純スピン流生成源の多端子化により純スピン流生成効率を格段に向上できることが判明してきている。今後は、このハーフメタル上へのGe形成技術の高度化と縦型デバイス構造の作製時に同時に形成される『ハーフメタル純スピン流生成源』の多端子化も視野に入れ、低消費電力スピントランジスタの鍵技術である低消費電力書き込み技術まで検討する予定である。
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