研究課題/領域番号 |
25246021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
深津 晋 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60199164)
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研究分担者 |
安武 裕輔 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10526726)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゲルマニウム / レーザー / 直接遷移 / 外場制御バレートロニクス / 実空間遷移 / 波数空間遷移 / バレー間フォノン散乱 / 伝導帯バレー選択的光励起法 |
研究実績の概要 |
本研究では、間接半導体ゲルマニウムの直接遷移を利用した室温近赤外レーザーの開発を目指している。これにより歴史的命題である間接遷移の攻略を達成し、外場制御型の新規バレートロニクスの開拓を模索することが目的である。 平成26年度では、ゲルマニウムの直接遷移バレーに外場によって電子を注入する手法の確立を目標に、バンド工学を駆使した電子注入構造のデザインと並行して光やフォノンの介助を含めた直接遷移バレーへの電子注入法を貪欲に追求した。前年度の課題を受け、先行研究では常温限定だった観測域を極低温まで拡張することで多くの知見を集積した。 電場を用いてLバレー電子を直接バレーに実空間遷移させた場合、電場加速の過剰エネルギーの格子系への散逸が顕著になる効果が研究の終盤になって判明した。この影響で系統的に積み上げを行ってきたFranz-Keldysh効果を始めとする電場誘起現象や効果の解釈に一定の再考の余地が生じた。そこで波数空間内遷移にもとづく直接遷移バレーへの電子注入法を検討に加えた。直接バレーに光励起された電子はサブピコ秒内に音響フォノンを介して速やかに間接Lバレーに緩和するが、その逆過程は終状態の状態密度が二桁小さく、低温では抑制される。室温付近になるとフォノンによる逆散乱過程によって電流注入された電子が直接バレーに遷移する。この際、Lバレー内の散逸が逆散乱過程の抑制に影響しない矛盾が発生するが、これはLバレー直上に発生する中間状態の介在によってLバレーと直接バレーの結合が切れるせいであり、バンド計算には取り入れらない効果として構造設計には反映させるべきことがわかった。一方、間接型のバンド分散では光励起のエネルギーに依存して電子の緩和先が変化することが新たに判明し、これを利用して特定の伝導帯バレーに光エネルギーの指定だけで選択的に電子を励起可能な伝導帯バレー選択的光励起法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度途中で測定装置に不具合が発生したため修理を行う一方で、極低温環境生成に用いるクライオスタットの性能劣化が新たに判明した。その更新を行った影響で、研究期間が一部後送りとなり、積み上げ式の実験計画の一部に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果に基づいて直接遷移バレーへの高効率電子注入のための構造の設計・作製、電子注入・制御法の考案・検証ならびに直接バレーを起源とする光利得発生の検証実験を強力に推進する。なかでも発展的課題の位置づけにあった円偏光励起の実験を前倒しすることで直接遷移が利用できかつスピン偏極に依存して初めて利得が発生するメカニズムを追求する。このためにはスピン依存のバレー間散乱の知見を集積する必要があり、さらにスピン制御・電子状態制御の目的で磁場の印加が必要となるため、当初計画に加えてこれらの研究を精力的に推進する。
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