研究課題
基盤研究(A)
(1)スピン偏極イオン散乱分光法によるBi超薄膜における電流誘起スピン偏極の検出:Bi(111)超薄膜は、分子線ビームエピタキシー(MBE)によってSi(111)基板上に作成し、同一の超高真空チャンバー内でスピン偏極イオン散乱分光測定を行い、スピン偏極度の電流依存性を測定した。その結果、電流に起因するスピン偏極度の変化を観測した。また、スピン偏極の向きが電流の向きと直交していることも確認し、Rashba系における電流誘起スピン偏極のモデルと一致していることがわかった。(2)トポロジカル絶縁体超薄膜でのスピンホール効果の検出:、Bi_2Se_3超薄膜をin situでH型構造に微細加工し、4端子電気伝導測定を室温で行った。微細加工および電気伝導測定は、真空トンネルで接続された超高真空マルチチャンバーシステムで行われた。H型構造は、2組のリード(電流および電圧リード)とその間をつなぐ架橋部からなる。電流リードに電流を流すとスピンホール効果によってスピン流が架橋部を流れ、逆スピンホール効果によって電圧リード間に電流が誘起されて電圧として検出される。実際に測定された電圧を電流リードに流した電流で割った抵抗値は架橋部の幅と長さに依存する。実測値はスピンホール効果を考慮するとよく再現されることがわかった。このデータ解析によってスピンホール角(電場によって生まれるスピン流と電流との比)γ=0.032とスピン拡散長=230 nmが得られた。γの値は白金などと同程度に大きい。またスピン拡散長は1 Kでの先行研究と矛盾しない値になっている。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、ラシュバ効果が発現する表面系およびトポロジカル表面状態でのスピン偏極電流やスピン流を検出する実験に成功した。しかし、まだ説得力のあるデータとなっていないので、低温での測定や膜厚を変えた試料での測定を来年度行い、論文として出版できるデータにしたい。
今後、低温での測定および膜厚の異なる試料での測定を行い、電流誘起スピン偏極効果およびスピンホール効果の検出を確実なものにしたい。また、キャリアドーピングなどを行って物質の多様性を増やし、それぞれの物質でのスピンホール角やスピン拡散長などの物性値を求める。
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