研究課題/領域番号 |
25246030
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
O・B Wright 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90281790)
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研究分担者 |
松田 理 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30239024)
友田 基信 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30344485)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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キーワード | 音 / 超高速フォノン物性 / メタマテリアル / プラズモニクス / Double-Negative材料 / 異常透過 / スプリットリング共振器 |
研究概要 |
本研究の目的はGHz音響メタマテリアルを研究し、音響メタマテリアルの実現領域をナノスケールまで拡張することである。周波数100GHz、波長100nmまでのコヒーレントフォノンをメタマテリアルナノ構造に光学的に励起し、バルク及び表面音響波を未だ実現されていない時間(~1ps)および空間(~20-50nm)スケールで制御する。この研究によって、周波数0.1GHz-0.1THzの範囲の音響メタマテリアルが初めて調査され活用できるようになるであろう。 この研究には、固体スーパーレンズや異常透過、負の屈折、表面音響波クローキング、メタマテリアル共振器、ハイブリッド光学機械材料、音響センシングなどの応用が考えられる。 平成25年度は、音響メタマテリアルの基本的な設計や製作、確認を行った。 A) 測定システムの構築:0.2psの時間ステップで100μm四方の領域走査を自動計測できるポンプ・プローブイメージングシステムを構築した。 B) 試料デザイン:GHz音響メタマテリアルは未だ存在していないので、密度や弾性率の周波数依存性の、解析的な見積り計算や数値シミュレーションからスタートした。 C) 試料作製:電子ビームリソグラフィやFIBなどを使って試料作製を行う。試料は機械的な特性が大きく異なる材料を組み合わせることが必要であり、フォトレジストポリマーやシリコン、金属や空洞を利用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
それぞれの研究項目における進行状況は以下の通りである。 1) 異常透過試料:二つの領域を繋ぐ共振器をもつシリコン構造における表面音響波の異常透過について、PZFlexを用いて何度もシミュレーションを行った。試みた構造のいくつかでFabry-Perot共振が確認され、この結果はシンガポールで行われる国際学会META14で発表予定である。しかし、いくつかの構造では共振が見られず、その理由を解明中である。実際の試料作製に取り掛かる前に、この理由の解明が必要であると考えている。 2) ハイブリッド光学機械材料:ガラス基板上の金薄膜からなるナノスケールのSRR(スプリットリング共振器)を作製した。プローブ光の波長や直線偏光の方向を変えてポンプ・プローブ実験を行い、振動モードの振幅がこれらのパラメータに強く依存することを明らかにした。このデータに対して音響シミュレーションも使って振動モードや音響光学結合の簡単なモデルについての定性的な解析を行っている。この結果もシンガポールで行われる国際学会META14で発表予定である。 3) 他の試料について:シリコン膜を使ってコイル状の構造を持つミクロンサイズの単位格子のメタマテリアルを作製し、PZFlexでその共振をシミュレーションした。しかし、このシミュレーション結果はわずかな音響透過しか示さなかった。この作成した試料を使って、この透過が本質的な制限によるものなのかを決定するテストをする予定である。 4) 負の質量と弾性率の試料:これらの材料について理論を構築しており、曲げ振動を元にした材料の青写真を持っている。このデザインの理論的な論文を準備している。試料作製にも近々着手する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
いくつかの研究プロジェクトは当初の予定よりも早く進んでいる。例えば、異常透過試料のデザインやSRRメタマテリアルの測定などである。しかし、遅れているものもある。例えば、double-negative材料の作製や測定などである。我々の考えているデザインが実行可能かを確かめるために、(曲げ振動GHzメタマテリアルについて行ったように)理論的な解析計算と、数値シミュレーションの両方に着手する予定である。平成26年度には以下について重点的に取り組む予定である。 ・GHz表面音響波の異常透過が実行可能であるデザイン、試料作製、および計測 ・引き続きSRRの測定と理論的解析 ・曲げ振動GHzメタマテリアルの実験での実現、縦波の異常透過のシミュレーション(これは最終目標であるナノ粒子による音響波の異常透過を利用した検出法に関わる研究である) ・例えばコイル構造を利用した他のGHzメタマテリアルの開発
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