研究課題/領域番号 |
25246032
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 和雄 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30143027)
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研究分担者 |
淡路 智 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10222770)
小黒 英俊 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90567471)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 無冷媒超伝導マグネット / ニオブ3スズ超伝導線材 / モノリス超伝導線材 / 高温超伝導テープ / スプリット型超伝導マグネット / 高温超伝導内挿コイル / 強磁場 |
研究概要 |
平成25年度の研究は、以下の2項目について行った。 1.Nbロッド法補強安定化基材を用いた高強度・高導電率CuNb/Nb3Snモノリス線材の開発 φ0.8mm×8本撚りCuNb/Nb3Snラザフォードケーブル(3.35mm幅、1.54mm厚み)とその断面積とほぼ等しいCuNb/Nb3Snモノリス線材(3.05mm幅、1.41mm厚み)の製作が可能であることを実証した。このCuNb/Nb3Snモノリス線材のパラメーターは、断面構成比としてCu/CuNb/non-Cu=15.5%/40%/44.5%であり、Nb3Snの平均等価直径は3.5ミクロンでフィラメント数は50293本である。670Cで96hの直線状熱処理後に、事前曲げとして+-0.5%と+-0.8%の両曲げを10回加えた。比較のために、事前曲げ処理を行わない試料も準備した。4.2Kでの磁場中で臨界電流測定を行ったところ、事前曲げ0%/0.5%/0.8%の試料はそれぞれIc(15T)=544A/734A/800A,Ic(16T)=402A/580A/653Aが得られた。CuNb/Nb3Snモノリス線材においても、顕著な事前曲げ効果を得られることが分かった。 2.大口径電磁力印加試験 事前曲げ歪み(-0.53%/+0.67%)を印加したφ0.8mm×16本撚りラザフォードケーブルを用いて、外径270mmのSUSテープとの共巻単層コイルを作製した。励磁試験結果として、4.2K,14Tで1452Aで素線の動きのためクエンチを生じた。SUSテープが0.4%歪を生じたため、ラザフォードケーブル導体としては0.3%歪みに緩和されていると考えられる。14Tで0.3%歪みでの素線は、Ic=100Aと見積もることができる。したがって、16本のラザフォードケーブルは1600 Aの臨界電流特性と推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スプリット型25T無冷媒超伝導マグネットは、低温超伝導バックアップコイルと高温超伝導インサートコイルから構成される。 1.低温超伝導バックアップコイルの線材として、Nbロッド法補強安定化基材を用いた高強度・高導電率CuNb/Nb3Snモノリス線材を開発している。この開発研究は予定通り進んでおり、画期的な成果に結びつくものと期待できる。 2.高温超伝導インサートコイルの開発に関しては、無冷媒超伝導マグネットの個体伝導冷却方式であるため、冷却のパスとしてエポキシ含浸が不可欠となる。しかし、高温超伝導テープは鏡のようなテープ面に物理蒸着をしたものであるため非常に剥がれやすいのが欠点である。エポキシ含浸による熱収縮や電磁応力によって、高温超伝導体が剥離して超伝導特性の劣化が顕著に生じる。この剥離現象を如何に解決するかで、手間取っている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
高強度Nb3Snモノリスコイルのフープ力による電磁力試験に関して:熱処理した高強度・高導電率CuNb/Nb3Snモノリス線材を用いて大口径コイルを作製し強磁場中での大電流通電法により、径方向に膨れて線材の長手方向の電磁力(フープ力)に耐えるかを実験する。Nbロッド法安定化基材CuNb補強で作製された3.5mm×1.41mm寸法の高強度・高導電率CuNb/Nb3Snモノリス線材は、将来の30T超伝導マグネット開発にも使用できる画期的なNb3Snモノリス線材となるように開発する。 高強度・高導電率CuNb/Nb3Snモノリス線材の超伝導基本特性と応力歪の解析に関して:Nbロッド法安定化基材CuNb補強のNb3Snモノリス線材の応力・歪み特性を評価する。Nbロッド法CuNb補強Nb3Sn線に対して、熱処理後の臨界温度、上部臨界磁場、臨界電流の基本特性を確認する。Nb3Sn線材の応力歪特性の評価は、中性子回折を用いて残留応力の測定を行う。本研究グループによる中性子による残留歪み解析は、新しい評価手法として世界から注目されており、国際熱核融合実験炉ITER用のNb3Sn線材の残留歪み評価にも検討されている。 Gd123テープのクエンチ特性と熱的安定性評価に関して:Gd123テープは、臨界電流を越えた極微小抵抗状態において直ちにクエンチ等に至らない。しかし、超伝導マグネットのクエンチにおいては、分割されたコイルのインダクタンスの違いによってクエンチ電流の誘導が生じる。超伝導マグネットでの電流分流時における最適なコイル分割比を決定する。無冷媒超伝導マグネットは、高温超伝導体のホットスポットの問題を克服する長所を持つと予想できる。この研究を通して、無冷媒超伝導マグネットの運転安全性について、従来型の液体ヘリウムを用いた超伝導マグネットと比較して明らかにする。
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