研究課題
平成26年度の研究は、以下の3項目について行った。1.高強度Nb3Snモノリス導体の特性評価:0.8mm径素線が8本のラザフォードケーブルとほぼ断面積が同等な幅3.05mm厚み1.41mmのモノリス導体の開発に成功した。0.5%曲げ歪の繰り返し曲げ歪を与えたものと与えなかった導体とを15Tの磁場中で臨界電流を比較した。その結果、プレ曲げありのモノリス導体で555A、なしの線材で485Aとなり、モノリス導体においても繰り返し曲げ歪効果が確認できた。2.中性子回折による高強度Nb3Snラザフォードケーブルの残留歪強化:繰り返し曲げ歪を印加した高強度Nb3Snラザフォードケーブルに対して、引張り歪のもとでのケーブルの内部歪を中性子回折によって低温で測定することで、ケーブルの軸方向における内部応力歪の残留歪を測定できた。11Kでの温度では、軸方向の残留歪は繰り返し曲げ歪印加によって0.332%から0.089%へと小さくなることが分かった。この残留歪の変化は、ラザフォードケーブルを構成する素線の振る舞いと同一であった。また、素線の内部歪はラザフォードケーブル表面で実測される歪ゲージの値よりもかなり小さいことが分かった。すなわち、外部応力印加に対して、ラザフォードケーブルの歪は素線としては減じられることが分かった。3.Gd123テープコイルのクエンチ特性と熱的安定性評価:Gd123シングルパンケーキコイルを用いて磁場、温度を変化させて通電特性を評価した。外部磁場遮断試験を実施した結果、抵抗性電圧はIcを大きく超えた誘起電流値で発生し、初期温度が低温になるほど、抵抗性電圧が急峻に立ち上がることが分かった。また、抵抗性電圧の挙動の違いから「分流状態」と「熱暴走状態」に分類することができる。
3: やや遅れている
補正予算で建設を進めている25T無冷媒超伝導マグネットに用いられる希土類系高温超伝導インサートコイルは、世界で未だ実用の実証がなされていない希土類系高温超伝導線材を使用するため、実用環境に類似した冷凍機冷却化の強磁場中において希土類系高温超伝導インサートコイルの評価試験を実施する必要があった。そこで、試作用希土類系高温超伝導インサートコイルを作製して評価試験を行った。その結果、エポキシ含浸による想定外のテープ線材剥離が起こり、高い確率で特性が劣化することが明らかとなり、その時点において希土類系高温超伝導線材を使用したインサートコイルによる25T無冷媒超伝導マグネットを製造することが困難な状況であることが判明した。その後、コイル製作技術の大幅な見直しを行い、抜本的な改良を行ってきたことにより、現在では世界最強磁場を発生できる希土類系高温超伝導インサートコイルの実現が可能となっている。しかし、希土類系高温超伝導テープ線材の剥離が生じやすい25T無冷媒超伝導マグネットの励磁試験には極めて慎重な見極めが必要であり、内側の希土類系高温超伝導インサートコイルと同じ構造のHTSコイルで、24.5T相当の電磁力を確認することを実施してきた。したがって、励磁試験結果について十分な解析を行い、慎重に25T無冷媒超伝導マグネットの励磁試験を行うことが重要であるために時間を必要とする。
補正予算により建設を進めている25T無冷媒超伝導マグネットの建設プロジェクトに対して、GdBCOテープによる内挿コイルと高強度Nb3Sn の16本ストランドラザフォードケーブルで外側コイルを製作している25T無冷媒超伝導マグネットのそれぞれ単独の実証試験を行う。実機のGdBCOコイル4層を用いて、強磁場センターの11T大口径マグネット中にセットして電磁力を印加することで確認を行いながら判断する。25T無冷媒超伝導マグネットでは、14Tが高強度Nb3Sn コイルによるバックアップ磁場であるため、25T発生時のGdBCOコイルは電流値140Aで380MPaの電磁力が印加される。実機GdBCOコイルを11Tの磁場中で試験をするためには、電流値190Aまで通電すると380MPaに相当する電磁力を経験する。また、高強度Nb3Sn コイルの単独励磁試験を14T発生まで終了させ、25T発生までの同時通電過程ををスプリット型25T無冷媒超伝導マグネットの実現検証へ取り入れる。さらに、高強度Nb3Sn モノリス導体のコイル試験及び断面積が等価な8本ストランドラザフォードケーブルコイルの電磁応力試験を実施する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (21件) (うち招待講演 1件)
Journal of Physics: Conference Series
巻: 568 ページ: 032019 (5pp)
10.1088/1742-6596/568/3/032019
Proceedings of the Twenty-second International Conference on Composites/Nano Engineering (ICCE-22), edited by David Hui, Saint Julian’s, Malta, July 13-19
巻: 1 ページ: 2pp
Adv. Cryo. Eng.
巻: 60 ページ: 186-191
IEEE Trans. Appl. Supercond.
巻: 24 ページ: 4302005 (4pp)
巻: 24 ページ: 4601704 (4pp)
巻: 24 ページ: 8401004 (4pp)