研究課題
まず平成26年中に東大物性研で繰り返した種々の予備実験を元に、高圧中性子回折実験に用いる試料構成を決定した。含水ケイ酸塩の分解に伴い放出される水の影響で、試料カプセルとして試みた種々の金属はいずれも大幅な融点降下を起こしてしまうことが明らかになり、試料カプセルとしては黒鉛が最適であることが明らかになった。しかし黒鉛を用いた場合でも、1000℃以上の高温に長時間保った場合は試料の鉄中に多量の炭素が含まれてしまうことが明らかになり、本番の中性子回折実験は1000℃以下の温度で行い、その温度域までの過程を詳しく調べるという実験方針を確立した。それらの情報をもとに、平成27年3月にようやく確保できた約1週間のJ-PARCのマシンタイムを利用して、高圧中性子回折実験を4ラン行った。出発物質中に水を含む場合と含まない場合では、高温高圧下に保持された試料の振る舞いが明瞭に異なることが明らかにされ、まだ充分なレベルとは言えないが、初めて高温高圧下で含水ケイ酸塩が分解するのにともなって、鉄が水素化する様子をその場観察で明らかにすることができ、当初目的とした研究が大きく進展した。さらに、実験修了後に常圧に回収した試料を、放射光X線や物性研のSEMなどを用いて調べ、それら回収試料の観察結果と高圧中性子回折実験の解析結果をもとに種々の考察を行って、27年度中に予定されているJ-PARCにおける次の高圧中性子回折実験でさらにどのような実験を行えば、より研究を展開できるか検討し、それに向けた準備を進めると共に、研究のとりまとめの論文作成も進めている。
3: やや遅れている
J-PARCで行った実験では、当初期待した以上の高品質の中性子回折パターンを取得することができ、さまざまな新しい情報を得ることができた。ところが、研究進展のためにはこのような実験を充分な回数繰り返すことが必須であるにもかかわらず、J-PARCではさまざまな予期せぬトラブルが起きて運転停止を余儀なくされる事態が続いており、配分されたマシンタイムのキャンセルが繰り返されて、まだ必ずしも充分な実験結果を得るまでには至っていない。27年度に予定されているマシンタイムに向けて、さらなる解析と準備を進めている最中である。
J-PARCで行った実験で、高温高圧下で充分な品質の中性子回折パターンを取得できる技術的目処が立ったので、それを用いて実験条件を少しずつ変化させた複数回の高圧実験を繰り返す予定である。それらの結果を取りまとめ、当初目的にある地球核の問題に当てはめて、研究のとりまとめを行う。
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