研究課題/領域番号 |
25246040
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
岸本 俊二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (00195231)
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研究分担者 |
田中 真伸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (00222117)
足立 伸一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60260220)
春木 理恵 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (30404031)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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キーワード | シリコン・アバランシェフォトダイオード / 放射光X線 / ピクセルアレイ / 時間分解X線実験 / 核共鳴散乱 / マルチチャンネル・スケーリング |
研究実績の概要 |
(A)64ピクセルSi-APDリニアレイ用0.5nsサンプリング・マルチチャンネルスケーリング(MCS)回路ボードを使って0.5ns(FWHM)の時間分解能を得ることに成功した。H26年度に問題となった高周波雑音はアナログ電源部のグラウンドをデジタル電源から切り離すことで解決できた。このボードを使ってFe-57を含んだFeBO3(333)結晶にRF磁場を印加したときの核共鳴ブラッグ散乱線への影響を評価する実験や、放射光2ns間隔パルスX線のほぼ完全な分離を確認する実験を行なった。検出器システムのテスト結果は国際会議SRI2015のプロシーディングスとしてまとめ、ドイツDESYで行なわれたICAME2015サテライトミーティングでの招待講演として報告した。核共鳴ブラッグ散乱の結果は論文として執筆中。 (B)128ピクセル用0.5nsサンプリングMCSボードを製作した。処理するデータ量が倍増したため、FPGAのメモリサイズを考慮して4枚のサブボード+マザーボードという設計に変えた。そのため設計期間が長くなり回路テストはH28年度に持ち越しとなった。 (C)重元素(ハフニウム)ナノ粒子プラスチックシンチレータの製作・テストを実施した。酸化ハフニウム添加プラスチック・シンチレータをSi-APD(比例モード)を受光素子とする検出器に搭載する実験を行ない、その結果について2016年3月の応用物理学会で発表、論文執筆中である。市販の鉛添加プラスチックシンチレータを搭載したSi-APDシンチレーション検出器について報告する論文は別途発表した。 (D) アナログメモリセル(AMC)によって5Gbpsで波形サンプリングを行う回路ボードを使って、KEK-PFリングのハイブリッドモード運転においてX線パルス波形記録実験を行なった。結果を2016年3月の物理学会(領域10)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
APDリニアアレイ用0.5nsサンプリングMCSボードの雑音低減対策に成功し、64ピクセル用0.5nsMCSシステムを完成、予想を超えて時間分解能(FWHM)が0.5nsとなることがわかった。MCSボードの時間ジッターを十分に抑えられたこと、かつSi-APDの空乏層が10μmと薄いためSi-APDそのものの時間分解能に余裕があるためと考えている。この64ピクセル用システムによって放射光ビームを使った性能確認、核共鳴散乱での応用実験を行うこともできた。128ピクセル用0.5nsMCSボードについては、製作までは行なえたが性能評価はH28年度に持ち越しとなった。パルス波形を高速サンプリングするAMC回路ボードによるAPD出力波形による実証も行うことができた。シンチレータについてはHfナノ粒子添加プラスチックシンチレータの製作を行い、あたらしく製作したSi-APD(比例モード)を受光素子とする検出器に搭載して評価を行なうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
(A) H25年度に製作した128ピクセルのSi-APDリニアアレイ(ピクセルサイズ:H100×V200μmおよびH100×V400μm、ピクセル間ギャップ:50μm、H方向長さ:19mm、空乏層厚:10μm)を装着して128ピクセルSi-APDリニアレイ用0.5nsサンプリングMCS回路ボードの放射光X線による性能評価実験、および応用実験を進める。これにより100チャンネル規模のSi-APDピクセルアレイ検出器の技術を確立する。 (B)(A)の結果を国際会議等で発表し論文執筆を進める。 (C)高速シンチレータとして重元素(ハフニウムなど)ナノ粒子プラスチック・シンチレータのテストを継続する。現有のシンチレータは、シンチレーション光が透過できる厚さが1mmにとどまっている。より厚い実用的なシンチレータを製作して、比例モードSi-APDを受光素子として用いるシンチレーション検出器による放射光ビームを使ったテストを進める。高エネルギーX線領域でも使用できる高速検出器として新しいピクセル検出器の可能性を広げたい。
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備考 |
(1)はKEK測定器開発室(DTP)ホームページ内のFPIXプロジェクトのURL。KEK-DTPプロジェクトとしてFPIXプロジェクトは終了したが引き続き成果は追記する。 (2)はKEK測定器開発室(DTP)ホームページ内のFSCIプロジェクトのURL。
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