研究課題/領域番号 |
25247007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
熊谷 隆 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90234509)
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研究分担者 |
相川 弘明 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20137889)
竹田 雅好 東北大学, 理学研究科, 教授 (30179650)
日野 正訓 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40303888)
舟木 直久 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (60112174)
木上 淳 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90202035)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 確率論 / 数理物理 / 解析学 / 複雑系 / 統計力学 / 国際研究者交流 / イギリス:カナダ:アメリカ:フランス:中国 |
研究実績の概要 |
1。熊谷は一般の測度付き距離空間における飛躍型確率過程に関する熱核評価の同値条件を研究し、熱核の安定性を証明した。これにより、当該分野における10年以上の重要な未解決問題が解決した。(Z.Q. Chen氏、J. Wang氏との共同研究で、現在論文を投稿中。)また、時間依存する離散的なランダム媒質においては、媒質の小さな摂動で離散時間マルコフ連鎖の長時間挙動が大きく変わり得ることを示した。これにより、時間依存しないランダム媒質との顕著な違いが明確になった。(R. Huang氏との共同研究で、雑誌に掲載された。)木上は、Z.Q. Chen 氏との共同研究により、jump核の下からの評価が任意のanulusの一定の割合の領域の上で成り立つ場合に、その領域上で対応する熱核の下からの評価が得られることを、幾つかの例において示した。 2。相川は、グラフで与えられた領域が大域的境界Harnack原理をみたすかどうかについて研究し、成立するためのグラフのシャープな滑らかさを明らかにした。また、様々な容量大域平均の0-1法則を導いた。竹田は、ランダムな時間変更を定義するスムーズ測度がグリーン緊密であれば、時間変更過程のマルコフ半群がコンパクトになることを示し、対称安定過程の場合にはグリーン緊密性がコンパクトであるための必要十分条件になる場合があることを示した。 3。多成分がカップルしたKPZ方程式は流体力学揺動理論において重要な役割を果たすが、無限大の発散を繰り込む必要がある。舟木は、単純な繰り込みを行った場合と、不変測度の解析に適した繰り込みを行った場合の違いをパラコントロール理論を用いて解析した。 4。日野は、一般の状態空間における強局所正則ディリクレ形式に付随する指数の決定問題に取り組み、ある付加条件の下で指数がスペクトル次元で上から評価されることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時間依存する離散的なランダム媒質に関して、staticな場合と大きく異なり熱伝導等の摂動安定性が確保できなくなることを示したことは、当該分野の今後の研究に向けての重要な観点となるだろう。また、飛躍型確率過程の熱核評価の解析を測度付き距離空間の範疇で確立したことも、長距離相互作用のあるランダムなモデルの解析に向けた重要な発展であり、大域的境界Harnack原理に関する結果も、境界Harnack原理が成り立つためのグラフの滑らかさをギリギリのところまで解析したという点で、究極の結果と言える。このように、本研究の中心課題のうち特に、確率論的手法と実解析的手法を融合させることにより汎用性の高い手法を編み出すという目的に関して幾つかの重要な進展をもたらすことができた。 研究代表者及び分担者は、今年度も海外での多くの研究集会に招待され、当該研究の世界への情報発信も順調である。以上のように、本研究は全体的には順調に進展している。応用面に関して少しテコ入れをしていきながら、引き続き研究を深めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な方策はこれまで通りであり、最終年度も代表者、分担者はいくつもの国際研究集会での招待講演を依頼されているので、そのような機会を用いて最新の情報の収集を行い、研究の推進を目指す。海外の一流研究者を招聘し、連続講演などを通じて相互理解を諮り、共同研究を推進する。夏の学校を開催し、これらを通じて当該研究の浸透と若手研究者の育成をはかり、関連研究の情報提供の場を設ける。
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