研究課題
前年度までの研究活動により得られた「あかり」遠赤外線全天マップについて、「あかり」チーム内公開後のフィードバックをチームメンバーから得ると共に、我々解析チームメンバーに於いても更なるデータのクオリティチェックを行った。その結果、一部データについて位置情報の補正を行う等の軽微な修正を行った。クオリティチェックの完了した全天画像データを、平成26年12月19日付けで広く世界の研究者に対し一般公開を行った。データ内容、及びキャリブレーションについてそれぞれ詳述した2本の論文投稿を行った。平成27年1月15日付けでデータ公開に関するプレスリリースを行い、またJAXA宇宙科学研究所ウェブページ上でのウェブリリースを行う等、データの周知活動に務めた。更には自然科学研究機構国立天文台の天文学データ共有サイト「ヴァーチャル天文台」へのデータ登録を行い、日本天文学会2015年春季年会に於いて、3月20日にデータ公開についての説明会を開催した。この結果、平成27年3月31日時点で、データダウンロードサイトには国内外1258名からのユニークアクセスが得られ、ダウンロードされたデータファイル総数は35282ファイルに上る。また有用なデータとして海外の研究者の複数のデータサイトへの登録も行なわれている。得られたデータについての科学解析も進め、「あかり」データの特徴としての空間ダイナミックレンジの大きさを活かし、赤外線シラス雲中のフィラメント構造の広域分布を明らかにすると共に、フィラメントの空間分布対する原始星や牡牛座T型星の分布の相関が、天体年齢に応じて変化する様子を明らかにした。また星間塵熱輻射のピークを複数波長バンドで観測しているという「あかり」データのもう一つの大きな特徴を活かし、星間塵熱輻射スペクトルを「あかり」データから正確に再現出来る事を示した。
2: おおむね順調に進展している
データのクオリティチェックを完了し、一般公開を行ったことで、本年度に於ける最大の作業目標を達成する事が出来た。データについて詳述した論文を出版することで、徐々に天文学コミュニティー全体におけるデータの認知度も高まっていると言える。一方で公開データを用いた本格的な科学解析はまだ始まったばかりであり、データ公開の特に米国を含む海外の研究者に対する告知を含め、今後共天文学コミュニティーにおける「あかり」遠赤外線全天マップの存在感を更に高めていくための不断の努力が必要である。
「あかり」遠赤外線画像の最大の特徴の1つは、銀河系内の星間ダストの温度及び柱密度の分布をこれまでに無い高い精度および空間分解能で正確に求められることである。予備的な解析によれば、従来得られていたデータに対し良い相関を示す一方で、その相関は領域毎に一定ではなく、また同一領域中でも星間物質の濃い領域と薄い領域で異なる様相を示すことが明らかになりつつある。差異の原因となるダスト特性の違いを明らかにし、その知見を活かした全天の高詳細なダストマップの作成を目指す。「あかり」の観測した太陽系内ダスト輻射の強度分布は、COBE等の観測からこれまで得られていた分布に比べ、より高詳細な分布を明らかにしている。従って得られた分布についての新たなモデル構築が必要である。太陽系内ダストの3次元的な空間分布について、新たモデルを構築し、公表を行う。「あかり」は全天に散らばる多数の天体を観測することで、観測画像を重ね合わせるスタッキング解析を通じ、各天体に共通する特徴を統計的に抽出する事が出来る。遠方銀河や銀河団に付随する遠赤外線輻射成分の高感度の検出を行う、銀河系内の若いTタウリ型星の星周ディスクの時間発展に対する示唆を得る、主系列星の星周低温ダスト雲の検出を行う、等が期待される。「あかり」の高感度・高詳細な観測データを活かし、これまで検出が不可能/困難であった輻射成分の検出・解析を行う。Herschelの見出した赤外シラス雲中のフィラメントについて、「あかり」はローカルなフィラメント構造の全天分布を得る事が可能であり、牡牛座分子雲についての解析からは、生まれたばかりの若い星とフィラメント構造との間に強い空間的相関が見られること、また天体年齢に応じた相関の時間発展が示唆される事が明らかとなった。より多くの領域について同様の解析を行い、巨大分子雲内部での星形成過程の理解に大きな貢献を果たす事を目指す。
CADE Centre d'Analyse de Donnees Etendues http://cade.irap.omp.eu/dokuwiki/doku.php?id=akariAladin Sky Atlas http://aladin.u-strasbg.fr/AladinLite/?target=M31&fov=5.00&survey=P%2FAKARI%2FFIS%2FColor
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (22件) (うち招待講演 5件) 備考 (5件)
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