本研究は中間赤外線での高精度モニタ観測を実現するため、2視野同時観測システムを開発し、中間赤外線での時間軸天文学を開拓することをその目標としている。 本年度は研究計画の4年目にあたる。これまでの研究で2視野同時観測システムのハードウエア的開発は終えており、今年はそのソフトウエア開発を行った。今システムは中間赤外線カメラMIMIZUKUに搭載されており、MIMIZUKUは東京大学アタカマ天文台6.5m望遠鏡およびすばる望遠鏡で運用されるため、そのソフトウエアシステムはgen2と呼ばれる望遠鏡統合制御システムと接続が必要となる。本年の開発によってシステムのつなぎこみは完成し、基本的な観測動作が可能な状態までシステムを完成させることができた。また懸念であったすばる望遠鏡への持ち込みについても審査が行われ、性能試験観測について受け入れが決定した。 大気透過率に関しても検討を進めた結果、30μm帯を含むすべての波長で視野25分角以内では視線の違いによる透過率の差異は1%より十分に小さいことを示した。また参照星の検討もAKARI衛星の全天カタログをベースとして進めた。カラーを用いた天体種別の判別から、10μm帯ではほぼすべての天域でK-M型巨星が参照星として用いられることが分かった。 以上、4年の研究によって2視野同時観測システムは開発を完了し、中間赤外線の時間変動観測に向けた準備を整えることができた。これら成果を論文として発表した。
|