研究課題/領域番号 |
25247021
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松尾 太郎 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00548464)
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研究分担者 |
小谷 隆行 国立天文台, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (40554291)
入部 正継 大阪電気通信大学, 工学部, 准教授 (60469228)
村上 尚史 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80450188)
GUYON Olivier 国立天文台, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (90399288)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 太陽系外惑星 / Thirty Meter Telescope / 補償光学 |
研究実績の概要 |
研究計画の目的である「次世代の超大型望遠鏡TMTでの地球型系外惑星の観測」に向けた装置開発に変更ないが、その目的を達成するための手段に変更があるため、その背景について初めに述べる。
[研究計画変更の背景] 本課題の申請時には、次世代のTMTでの地球型系外惑星の分光観測を目的であり、その目的を達成するための手段として、分光を行なうと同時に高いコントラストを獲得する装置の室内実証を目指していた。本装置は、想定として、地球大気の揺らぎによって乱れた波面を極限まで補正する「極限補償光学」の後につけるものである。しかし、申請時から申請開始の間に明らかになった事実として、このような装置をいち早く実現させるには、その前段階にある「極限補償光学」の実現が急務であることが分かった。その理由は、そもそも、地上望遠鏡での極限補償光学が世界で実現されておらず、他のTMT装置候補に比べてその実現可能性の低さが問題となっていた。そこで、申請時に比べてより困難ではあるが、TMTでの高コントラスト観測による地球型系外惑星の直接観測の実現に向けて、本課題では極限補償光学の実現を目指すこととした。
極限補償光学のOn-skyの実現に向けて、極限補償光学を搭載する望遠鏡の選定から進めた。その結果、現在岡山県の浅口市に建設中の3.8mの望遠鏡が、極限補償光学の性能を発揮でき得る有効径を有し、実証のために観測時間を確保できる点から最適であるという判断に至った。また、TMTは492枚の分割式望遠鏡であり、分割での超高コントラスト実験は世界に類例がなく、世界に先駆けた取り組みとなっている。従って、本実験が成功すれば、TMTでの高コントラスト装置の実現に大きく近づく。また、実験の準備とともにその極限補償光学についても検討を進めた。極限補償光学は、装置構成そのものが複雑化しており、その仕組みを理解し、仕様導出までを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、On-sky観測のための望遠鏡の選定および、極限補償光学装置の仕様について検討を行った。極限補償光学の構成要素は、「リアルタイムに波面の歪みを計測する波面計測器」・「高速に計測値から補正値に変換する演算器」・「その補正値に基づいて高精度に補正する波面補償器」である。それぞれについて、3.8m望遠鏡において離角0.1秒角において10の-4乗のコントラストを達成できる仕様を導出した。その結果、波面計測器には、実現可能性の高いShack-Hartmannカメラを、波面補償器には、500素子の可変形鏡(3.8m望遠鏡に搭載した際に40cmの空間スケールまで補正)を採用した。また、計測から補正までに必要な時間は、およそ0.5msec(2kHz)以下にする必要があり、そのためのリアルタイムの演算器が必要であることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、補償光学の研究を進めている研究者らとより広範囲な連携が必要であろう。現在、すばる望遠鏡AO188の関係者と密にコンタクトを取っており、可能な限り、本装置へのコメントを求めている。また、2014年度には、その関係者らにレビューアーとなっていただく予定で、その独自レビューに基づいて装置の改訂を行い、実機の構築を目指す。
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