研究課題/領域番号 |
25247028
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
満田 和久 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (80183961)
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研究分担者 |
藤本 龍一 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (20280555)
太田 直美 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (40391891)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / X線天文学 / 宇宙科学 |
研究実績の概要 |
ASTRO-H衛星に搭載されるX線マイクロカロリメータ検出器が軌道上で本来の検出器の持つエネルギー分解能(4eV)と絶対X線エネルギー決定精度(0.5eV)を実現すべく研究をすすめた。当初予想していなかった大きな問題として,検出器を50mKに冷却する冷却装置に使用する機械式冷凍機からの機械擾乱が検出器分解能に影響を与える影響については,昨年度末までに問題点を克服し,今年度は打ち上げに向けた最終準備,打ち上げ運用,軌道上初期運用を行った。打ち上げの準備の一項目として,軌道上で液体ヘリウムを全て消費した後に実施する無寒剤運転の際のエネルギー分解能の較正を行った。無寒剤運転では1.2K熱浴の温度の安定度が下がるため,エネルギー分解能の劣化が懸念されたが,有意な劣化がみられないことを実験で確認することができた。2015年12月より打ち上げオペレーションを開始し,2月17日に打ち上げられた。打ち上げ直後から軌道上での冷却を開始し2月22日に検出器は50mKの所定の温度に達した.検出器の性能としては,地上試験とほぼ同一の4.9eVの分解能が得られ,いくつかの天体を試験的に観測した。衛星は3月26日に姿勢制御系の問題で機能を停止したが,その最後のテレメトリーデータまで,検出器は50mKに保たれ,観測を行っていた。 マイクロカロリメータの高いエネルギー分解能を活かして宇宙のダークサイドに迫る研究の準備として,昨年度まではすざく衛星の大量の観測データを用いたkeV領域の質量のダークマター候補からの放射探査を,線スペクトルに注目して行って来た。今年度は,連続成分に対象を広げ,その候補としてアクシオンに崩壊するダークマターの探査の方法を検討し,その検討した方法により,データの解析をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ASTRO-H衛星に搭載されたX線マイクロカロリメータ検出器により,軌道上で要求(<7eV) を満たす4.9eVのエネルギー分解能が得られ,軌道上観測データの解析に必要な較正データも得られた。本格的な観測を2016年4月後半から開始する予定であったが,衛星の機能停止により,約1ヶ月間の観測データで,かつ,X線入射口のゲートバルブが閉じた状態でゲートバルブ上のベリリウム窓を通した観測データのみとなった。この観測データを最大限活かすための研究を行うように計画を変更する。 すざく衛星のデータを用いたkeV質量のダークマター探査については,線スペクトルの解析を終了し,連続成分の解析を開始しており,順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
貴重なSXSの観測データは,定常状態として考えていた状態とは異なる観測状態で実施されたものである.このため,当初は予定していなかった較正が必要となる。具体的には,(1) ゲートバルブのベリリウム窓の透過特性を,地上に残ったスペア品を使って行う,(2) 軌道上エネルギー較正装置である MXS (Modulated X-ray Sources)がまだ稼働していない状態であったため,FW (Filter Wheel)および較正用画素にとりつけられた放射線源のスペクトル解析を行い,観測データのエネルギー較正をどこまで詰めることができるかを検討する。 また,すざく衛星を用いた研究も引き続き実施する。
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