研究実績の概要 |
本研究は、CERN研究所の反陽子減速器において「反陽子ヘリウム原子(ヘリウム原子核に、反陽子と電子が1個ずつ束縛された準安定な中性原子)」の精密レーザー分光を行い、基礎物理定数の一つである(反)陽子・電子質量比を世界最高精度で決定することを目指している。 平成26年度は、それまでLHC加速器のエネルギーアップグレードのために長期停止していたCERNの加速器群の運転が再開されたものの、反陽子減速器からの低速反陽子の取り出しが安定せず、当初予定していた実験、すなわち「1.5Kに冷却したヘリウムガス標的中で反陽子ヘリウム原子を生成し、二光子分光を行うことで、ドップラー幅を抑えた高精度分光」を行うことが出来なかった。 その代わりとして、以前から行っていた1.5Kに冷却したヘリウムガス標的を用いた「一光子」分光のうち、他の遷移に比して統計が少なかった反陽子ヘリウム3原子の(n,l)=(36,34)→(37,33)遷移と(34,32)→(33,31)遷移のデータを収集し、収集済みの他の11個の遷移データと合わせて、科学技術委員会CODATAに提供した。 それらの数値は、近々更新が予定されている基礎物理定数(CODATA2014)の推奨値決定に使われることになっている。 これらの結果について,CERN研究所で行われた国際会議Questioning Fundamental Physical Principlesや,ハワイで開催された2014年日米物理学会合同原子核分科会での招待講演で発表した。
|