レプトンフレーバーを破るミュー粒子崩壊探索を目的としたMEG実験は2013年に終了し、全データ解析も最近終了して3月のLa Thuileの国際会議にて世界最高感度の探索結果を報告した。残念ながらレプトンフレーバーを破るミュー粒子崩壊の発見には至らなかったが、この最終感度を一桁向上させることを目標にMEG II実験の研究開発を順調に推進してきた。本研究では特にMEG II実験において感度向上に欠かせないガンマ線検出器の性能改善を、新しい光センサーを開発することにより可能にし、新しい物理の発見につなげることを目的としている。
当該年度では、前年度までに開発を終了したクロストーク抑制機構を取り込んだ新しい光センサーMPPCの常温、低温での測定を行った。従来のクロストーク抑制機構のないセンサーと比較し、実際にクロストーク抑制機構が正しく動作しており、動作電圧範囲をさらに上げることが可能であることを確認した。このクロストーク事象の低減によりゲインを上げることが可能となりS/Nの向上、さらにエネルギー分解能が向上することを実証した。光センサーの大面積化のために、波形のテール部分が増加してしまうことを防ぐ目的で6mm角センサーを4つ直列接続して使用することを検討してきたが、これまで2個並列にして2個直列にするか、4つ直列にするかの選択肢があった。今回4つ直列の接続方法で単光電子ピークの分離が可能であること、波形のテールが短いことによる時間分解能の良さ、等を実測し、4つ直列方式の採用を決定した。
これらの結果をもとにより現実的なシミュレーションを行い、エネルギー、位置分解能の改善だけでなく、時間分解能の改善の可能性についても新たな知見を得ることができた。以上の研究により、MEG II実験ガンマ線の性能改善を証明し、今後の様々な実験に対してこの光センサーの適用可能性を示すことに成功した。
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