研究課題/領域番号 |
25247039
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下田 正 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70135656)
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研究分担者 |
小田原 厚子 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30264013)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中性子過剰核 / スピン偏極核分光 / 新たなレーザー分光法 / 32Na原子の超微細構造 / 32Na核のベータ崩壊 / 32Mgの核構造 / 変形状態 / ベータ遅発中性子放出 |
研究実績の概要 |
本研究の第一段階の目的である、30Mgおよび31Mgの核構造に関する実験データの解析を全て完了させることができた。その結果、30Mgと31Mgに未発見の励起状態や遷移経路が存在することを突き止めるとともに、多くの励起状態のスピン・パリティを決定した。続いて、理論計算との比較によって、以下の特徴的な構造が明らかとなった。30Mgでは、殻模型でよく説明できる球形の状態、大きく変形した状態、負パリティを持った状態という、多様な構造の状態が比較的低い励起エネルギー状態に混在することが明らかとなった。さらに、scissors modeと呼ばれる、中性子と陽子がハサミのように逆位相で集団運動するという特異な構造の特徴を示す状態が発見された。31Mgでは、大きく変形した状態や、それが回転運動しているという集団運動状態が低励起エネルギー領域に存在するとともに、球形の状態が高励起エネルギー領域に存在することが初めて突き止められた。さらに、これまでの理論計算では説明できないような性質の集団運動状態が発見された。 これと並行して、本研究の第二段階の目的である32Mgの核構造解明実験の準備を行った。まず32Na原子の超微細構造を解明する必要があるが、32Naのような極めて生成量の少ない原子の超微細構造は全く未知である。そこで、非常に高い測定効率を持つ新たなレーザー分光法の開発を行った。高速で飛行する32Na原子ビームに対して、UVレーザーを同軸方向に照射して原子の高励起状態を生成し、中間状態から放出される脱励起光を測定する(励起光と脱励起光の波長が異なる)という新しい手法を考案し、新たな計測系をシミュレーションにもとづいて最適設計・製作した。3月末にカナダTRIUMFにおいて、安定核である23Naビームを用いた実証実験を行い、現在データ解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30Mgと31Mgの核構造に関するデータの解析結果は、当初の予定を超えた豊富な内容となり、詳細な議論ができた。その結果、新たな発見がいくつかさなれたことは特筆される。また、32Mgの構造実験に関しては、非常に高い測定効率とS/N比を持つ新たなレーザー分光法の開発を、独自のアイデアにもとづいて行うことができた。具体的には、高速で飛行する不安定核原子ビームに対して、UVレーザーを同軸方向に照射して原子の高励起状態を生成し、中間状態から放出される脱励起光(励起光と脱励起光の波長が異なる)を測定するための、球面ミラー、大口径レンズ系、狭帯域フィルター、及び超高感度光電子増倍管からなる計測系を、シミュレーションに基いて最適設計し、製作することができた。さらに、3月末にはカナダTRIUMFにおいて、安定核である23Naビームを用いた実証実験を行い、実証実験を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.本研究によって得られた30Mgと31Mgの核構造に関する新たな発見について、国際会議の招待講演にて報告する(7月)。 2.同時並行して、30Mgと31Mgの核構造に関する論文を執筆し、投稿する(10月まで)。 3.32Naの新たなレーザー分光計測法を次の2段階で完成させる。(i) 23Na ビームを用いて、バックグラウンドを徹底的に排除する方法を探る(8月まで)。(ii) 32Na ビームを用いて、32Na原子の超微細構造を測定する(12月まで)。 4.スピン偏極した32Naビームを生成し32Mgの核構造を解明するための実験の準備を整える(3月まで)。
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