研究課題/領域番号 |
25247042
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
佐藤 修一 法政大学, 理工学部, 教授 (30425409)
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研究分担者 |
高橋 竜太郎 国立天文台, 重力波プロジェクト推進室, 助教 (60270451)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 重力波 |
研究実績の概要 |
本研究は従来と全く異なるアプローチである変位雑音相殺技術をさらに展開することによって、レーザー干渉計による位置測定の量子力学的限界である標準量子限界を超える方法を提案し、実験によって超標準量子限界となるレーザー干渉計を実現することを目的としている。雑音のキャンセルという独創的な手法を用いることによってコンパクトな超高感度「位相」センサーとなる干渉計を構築し、フルスペックの干渉計設備を用いることなく、テーブルトップサイズの小型干渉計でありながら世界有数の位相感度を目指す。 変位雑音相殺干渉計を用いたこれまでの研究によると、標準量子限界を超える感度レベルに到達するには、ハイパワーのレーザー、徹底した防振系、及び軽量の鏡(試験マス)の3つの技術要素を高いレベルで実現することがポイントである。本研究では後者2点について整備を行うことによって外部擾乱を抑え、SQLの感度領域にアクセスする。これを踏まえ、今年度は高感度地震計(センサ)と受動防振装置(支持機構)を組み合わせた能動防振系の開発を行った。受動防振装置はヘキサポッドなどの固定支持機構を用いる場合に比較して防振効果も得られることがポイントである。光学定盤に載せる測定光学系については地面振動の影響を抑えるためにモノリシックデザインの光学系を採用する。その際、入射光学系に関する振動が導入する雑音を回避するため、ファイバー入射光学系としたモノリシック光学系を製作し、その性能を評価した。また鏡のアライメントに不感となる光学系を設計し、プロトタイプ光学系を製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は標準量子限界を超える感度レベルに到達するために挙げた3つのポイントのうち、「徹底した防振系」について高感度地震計(センサ)と受動防振装置(支持機構)を組み合わせた能動防振系の開発を行った。 高感度地震計としてはnanometrics社製品を選定し性能評価を行った。またファイバー結合としたモノリシック光学系は双方向のマッツェンダー干渉計構成とし、ファイバー結合をする前後の変位感度測定によってその安定度を評価した。主に10Hz程度以下で散射雑音レベルからエクセスしていた雑音レベルが、ファイバー結合に変更することによって改善し散射雑音レベル付近まで低減することができた。また鏡のアライメント不感となる光学系は、微小鏡や浮上鏡など、アライメントの制御が容易でない場合に、アライメントを取らなくても可干渉性を担保するように光軸を受動制御する機構である。この機構の発明によって本実験を含む微小鏡を用いた光実験に大きく可能性を開いたと言える。これらの観点から、本研究は概ね順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
能動防振系の開発については高感度地震計(センサ)と受動防振装置(支持機構)の特性の評価を進めつつ、真空槽内で閉じた系で能動防振制御系が成立するような全体システムの設計を行う。併せて真空槽内の構造・配置の設計を進め、機構部分の構築を行う。制御は真空槽内に設置したバッテリー駆動の計算機で行うこととし、主要な部分はデジタル制御とする。3軸のセンサーを複数配置することによって光学定盤の剛体6自由をセンシングし、制御するための制御アルゴリズムの設計と実装も並行して進める。
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