研究課題
本研究では、固体中での電子密度分布の変化や分子間電子移動が強誘電分極を担っている電子型強誘電体を対象として、テラヘルツ波による高速の分極制御を目指してきた。14年度までに、チタンサファイアレーザーを励起源としたパルス面傾斜法を用いて、最大450 kV/cmのテラヘルツパルスの発生に成功した。さらに、このテラヘルツパルスを用いて、低温で電子型強誘電性を示す有機分子性結晶TTF-CAの高温常誘電相においてテラヘルツ波励起により強誘電相の20%に達する分極が生成することを見出した。本年度は、TTF-CAの関連物質であるTTF-QBrCl3およびDMTTF-2,6QBr2Cl2の常誘電相においてテラヘルツ励起第二高調波プローブ、反射プローブ測定を行い、テラヘルツ電場による強誘電分極生成を実証した。TTF-QBrCl3は、温度低下によりTTF-CAより連続的な強誘電転移(中性―イオン性転移)を起こすが、このことを反映して、テラヘルツ電場による分極ドメインのダイナミクスの特性周波数が30%程度低下することがわかった。一方、DMTTF-2,6QBr2Cl2は、極低温にしても強誘電秩序が生じない量子常誘電性を示す物質であるが、この物質では、量子常誘電性を反映して、テラヘルツ電場によって他の二つの系に比べて一桁以上大きな空間スケールに渡ってコヒーレントな分子振動が生じることが明らかとなった。成果の公表については、今年度中に、前年度までに完了した電荷秩序系分子性結晶α-(ET)2I3におけるテラヘルツ電場による強誘電分極制御の研究をScientific Reports誌に公表した。また、TTF-CAのテラヘルツ電場による分極生成の研究については、現在論文を投稿中である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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