研究課題
基盤研究(A)
21世紀より共鳴X線回折が軟X線領域で盛んに行われるようになってきた.特に3d遷移金属のL吸収端は400eVから900eVのエネルギー領域にある.このL吸収端を利用することによって,いままで見ることが困難であった3d軌道の秩序状態,磁気秩序を直接観察することができる.我々は,円偏光X線を用いて3d遷移金属化合物や4f希土類化合物の磁気,構造カイラリティのドメイン構造を観察,制御するために研究を進めている.平成23年度は,X線集光ビームシステムの検討を行った.本システムの可能性として精密KBミラー,ゾーンプレートの設計を行った.その結果,ゾーンプレートが最も有効であることが判明した.現在,回折実験に用いるためのゾーンプレートの製作が完了している.超高真空装置内において回折のための空間を確保し,焦点距離,有効集光径などの計算を行った結果.700eVから1000eVのエネルギー範囲において,約200nmの有効集光径が最も適していることが判明した.昨年度行ったSPring-8ビームライン17SUで行ったビーム集光のための予備実験は,予定通り成功した.ゾーンプレートを導入することよって現在の空間分解能60マイクロメートルを2桁以上落とすこととなり,より詳細なカイラリティ構造の観察ができるようになる.一方,我々は大阪大学大学院基礎工学科木村研究室との共同研究を行い,希土類化合物DyFe3(BO3)4のDy四極子モーメントのカイラルイメージの観察に成功した.この研究成果は,英国の科学雑誌「Nature Materials」に出版された.
2: おおむね順調に進展している
昨年度に予定していた「X線集光ビームシステムの検討」は予定通り終了した.ゾーンプレートによる予備的な集光実験によって,ほぼ計算どおり集光できることが判明した.現在,レーザービームの設置作業を進めている.
1.昨年度,集光ビームシステムについて,精密KBミラーあるいはゾーンプレートの設計を行った結果,ゾーンプレートによる集光が最もこの研究に適していることが判明した.今年度は,その設計の結果得られたゾーンプレートを実際に回折装置に導入する.2.より良い効果的な集光配置を実現するために,入射X線に対して精密位置制御を行う必要がある.このために,三次元ピエゾ素子およびマイクロメートル並進システムを同時に導入する.また,カイラルイメージを測定するために,測定試料もナノメートルの精度で二次元スキャンを行う必要がある.このための測定試料のための二次元並進移動システムを構築する.3.カイラリティを制御するため外場としてレーザービームを導入する.レーザービームの基本波は840nmである.この変更を円偏光に切り替えるため1/4波長板を導入し,円偏光の右,左を切り替えるためのシステムを構築する.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
Nature Materials
巻: 13 ページ: 611-618
10.1038/nmat3942
Physical Review Letters
巻: 111 ページ: 217001
10.1103/PhysRevLett.111.217001
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140407_1/