研究課題/領域番号 |
25247054
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 良和 独立行政法人理化学研究所, 放射光総合科学センター, 専任研究員 (90250109)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 新機能材料 / 放射光 / X線・粒子線 / 共鳴X線回折 / 強相関系 |
研究実績の概要 |
共鳴X線回折は,通常見ることが困難である磁気,軌道,電荷整列を直接観察することができる.特に21世紀になって,軟X線領域の研究が盛んになってきた.この理由は,3d遷移金属を含む強相関系物質の場合に,L吸収端(400eVから900eV)を用いて,3d軌道の秩序構造を直接観察できることにある.我々は,円偏光X線を用いて,3d遷移金属や4f希土類化合物の磁気,構造カイラリティのドメイン構造を直接観察,制御すること目指して研究を推進している.物資に生じる詳細なドメイン構造を観察するためには,X線ビームのサイズをより小さくし,空間分解能をより高めることが望まれる.そのために,より良く集光されたX線ビームを作り出す必要がある. 昨年度は,ゾーンプレートを設置するための,ピエゾ並進移動システム,および粗動並進移動システムを導入した.また,試料の二次元イメージング測定をよりより安定化させるため,冷凍機システムの改造を行った.また,物質の強的秩序状態を制御するため,すでに導入されている外場としての磁場,電場以外に,すでにビームラインに設置されているレーザーシステムを回折装置に導いた.このレーザシステムは,840nmを基本波長とする可視光レーザであるが,円偏光の切替,および,ラゲール光としての軌道角運動量の符号も切り替えることができる.ラゲール光の発生のために,石英位相制御板を製作した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り,ゾーンプレートを用いた100ナノメートル級のX線集光のための装置を構築した.3次元ピエゾ位置調整機構と超高真空タイプの移動ステージの導入によって,ゾーンプレートの移動システム,調整機構を確立した.また,従来,空間的に不安定であった冷凍機システムを改良し,より安定化することができた.さらに,CMOSカメラを購入することによって,いままでできなかった回折シグナルを2次元的にとらえられりようになった.時間変化を毎秒45フレームで捉えることができる. 今年度は,これまでに構築した集光システムを用いて,ドメインイメージングの観察ができると期待している.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,構築したナノメートル集光X線を用いた強的秩序状態のドメインイメージングの観測を実施する.具体的には1.集光X線のスポットサイズの測定(計算値は200nmである).2.ナノ集光X線を用いて,一次磁気相転移を有する物質の相転移温度においてのドメイン分布の観察,および動的発展の観察,3.電場,磁場,レーザービームなどの外場に対する磁気,および軌道秩序の動的観察を行う.特に光誘起による磁気カイラリティ(逆ファラデー効果)制御とその観察を積極的に行う. 今年度,新たに回折強度を二次元的に測定するための広角領域を測定できる2次元MCP検出器を導入する.これによって,特異な磁気秩序の時間発展なども観測できると期待される.
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