研究課題/領域番号 |
25247058
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小野瀬 佳文 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80436526)
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研究分担者 |
貴田 徳明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (30587069)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 強相関電子系 / スピントロンクス / マグノン / マイクロ波 / テラヘルツ波 |
研究概要 |
本研究では、磁性体の磁気励起現象における相対論効果をマイクロ波やテラヘルツ波などのプローブを用いて研究するものである。 今年度小野瀬は、カイラル磁性体Cu2OSeO3において異常なマイクロ波応答を観測することに成功した。具体的には、この物質のトポロジカル磁気状態であるスキルミオン格子相において、相対論的な動的電気磁気結合によって誘起されたマイクロ波の非相反応答(透過率が方向によって異なる現象)を観測した。これは、可視光領域で観測されている光学的電気磁気効果のマイクロ波版の現象でありこの物質で初めて観測されたものである。さらには関連した成果として、金属間化合物MnGeにおいてスキルミオン格子相における巨大なネルンスト効果(熱ゆらぎによる電場発生)も観測することに成功した。また、空間反転対称性が破れた磁性体において期待される、相対論効果に由来する非対称なマグノンバンドの効果を観測するため、プリント基板上に作成した任意のアンテナ構造を用いてマイクロ波応答を観測できる測定系を整備して、カイラル格子を持つフェリ磁性体LiFe5O8を用いた予備的なマイクロ波応答の測定を行った。 貴田は、磁性強誘電体Co3B7O13Iにフェムト秒レーザーを照射するとテラヘルツ電磁波が発生することを見出した。さらに放射したテラヘルツ電磁波の位相を利用すると強誘電ドメインが電気分極の方向を含めて簡便に可視化できる新たな強誘電イメージング法を開発した。特に、Co3B7O13Iにおいて90度強誘電ドメインや試料の奥行方向の強誘電ドメインの不均一分布の可視化に成功している。さらに、市販の圧電酸化物から将来の磁気状態制御に有用な円偏光かつ狭帯域テラヘルツ電磁波の創成にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Cu2OSeO3におけるスキルミオン格子相においてマイクロ波電気磁気効果を初めて観測することに成功し、磁性強誘電体Co3B7O13Iにおけるテラヘルツ波発生やドメインイメージング法を開発することが出来た他、関連する研究成果としてスキルミオン誘起のネルンスト効果の観測や狭帯域円偏光テラヘルツ波発生などの成果も得られた。さらには、相対論効果に由来する非対称なマグノンバンドを使ったマイクロ波機能開拓に向けた研究にも取りかかれている。
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今後の研究の推進方策 |
小野瀬が進めているマイクロ波測定に関しては、フォトリソグラフィーの技術を導入してミクロンスケールのマイクロ波アンテナを導入し、高波数マグノン励起に期待される非対称マグノンバンド効果による機能開拓を目指す。また、電場下のマイクロ波応答の測定系を整備し、マイクロ波の電場効果の研究を進める。 貴田が進めているテラヘルツ測定に関しては外部電場・磁場下のテラヘルツイメージングの実験を進めて、磁気・誘電ドメインとテラヘルツ光の相関を明らかにする。また、磁性強誘電体Co3B7O13I以外の物質系に対象を広げる。
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