研究課題/領域番号 |
25247073
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小田 啓邦 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (90356725)
|
研究分担者 |
山本 裕二 高知大学, 教育研究部自然科学系, 助教 (00452699)
河合 淳 金沢工業大学, 先端電子技術応用研究所, 教授 (10468978)
臼井 朗 高知大学, 総合研究センター, 教授 (20356570)
臼井 洋一 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球深部ダイナミクス研究分野, 研究員 (20609862)
中村 教博 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80302248)
宮城 磯治 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (90358119)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | SQUID顕微鏡 / SQUID素子 / 古地磁気学 / 磁気マッピング / 鉄マンガンクラスト / 残留磁化 / 磁気シールド / XYZステージ |
研究実績の概要 |
本年度は研究の核となるSQUID顕微鏡の安定動作、磁気シールドの製作とXYZステージのソフトウェアを含めたシステム全体の完成、ならびにXYZステージでの走査によるSQUID顕微鏡実データ取得を目指した。SQUID顕微鏡本体については昨年度に引き続きSQUIDセンサの安定動作を目指し、サファイアロッド先端へのシリコンチップ装着、SQUID顕微鏡のクールダウン・セットアップ・液体ヘリウムトランスファ・ウォームアップなどに関するノウハウを蓄積した。磁気シールドの製作を行ったが、PCパーマロイの2重構造とし、試料を出し入れする扉、液体ヘリウムトランスファのための天井扉、SQUID顕微鏡を出し入れするための大型扉の3つの扉を配した。交流磁界(0.1Hz, 振幅500nT)に対する磁気シールド性能はX軸、Y軸、Z軸方向のシールド係数がそれぞれ257, 288, 91であった。磁気シールドを交流消磁後の試料測定位置でのZ軸方向の直流残留磁場成分は~5nT以下であった。また、レーザー距離計を用いて非磁性XYZステージ(ストローク100mm、分解能1μm)の位置決め精度の評価を行ったが、概ね10μm以下であることを確認できた。SQUIDセンサはFlux Locked Loop(FLL)に接続されてZ軸方向の磁場が電圧出力され、XYZステージとともにコントロールボックスに接続される。コントロールボックスはUSB接続されたPCによって制御され、本プロジェクトで開発された専用測定ソフトウェアによって走査による磁場データが収録される。25μmの直線電流を用いた試験測定結果を理論値と比較した結果、SQUIDセンサがサファイアウィンドウに最も近づいた状態で約150μmの距離が達成されたことが確認できた。完成したシステムによって北西太平洋から得られた鉄マンガンクラスト薄片試料を用いた測定を暫定的に行ったが、Oda et al. (2011)と同様に78万年前のブルンー松山地球磁場逆転を含む地磁気逆転パターンを確認することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究の核となるSQUID顕微鏡の安定動作、磁気シールドの製作とXYZステージのソフトウェアを含めたシステム全体の完成、ならびにXYZステージでの走査によるSQUID顕微鏡実データ取得に成功した。昨年度に引き続きSQUIDセンサの安定動作を目指したが、サファイアロッド先端へのシリコンチップ装着、SQUID顕微鏡のクールダウン・セットアップ・液体ヘリウムトランスファ・ウォームアップなどを何回か経験し、これらに関するノウハウを十分に蓄積することができたことは、今後に向けて大きな前進である。また、非磁性XYZステージについても長期にわたって極めて安定な動作を多数繰り返すことが確認されたことも安心材料である。磁気シールドはPCパーマロイの2重構造とし、試料を出し入れする扉、液体ヘリウムトランスファのための天井扉、SQUID顕微鏡を出し入れするための大型扉の3つの扉を配したが、扉の開閉の安全性・操作性を含めて極めて満足な状態である。磁気シールドを交流消磁後の試料測定位置でのZ軸方向の直流残留磁場成分は~5nT以下であり、当初の最低目標10nT以下を達成している。SQUIDセンサとサファイアウィンドウの最短距離は約150μmを達成したが、当初の目標200μmを若干上回っている。さらに、完成したシステムによって北西太平洋から得られた鉄マンガンクラスト薄片試料を用いた測定を暫定的に行った結果、地磁気逆転パターンを確認することができたが、今後の実データ蓄積に向けて順調に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
プロジェクトの前半2年間の課題であったSQUID顕微鏡システムの開発とその安定動作が確認されたので、今後は測定データによって研究成果を出す方向に重点をシフトしていく。今年度の目標としては、SQUID顕微鏡の開発そのものについての論文、SQUID顕微鏡システムのノイズレベル・精度評価・較正に関する論文をそれぞれ1編執筆する予定である。また、光学画像とのマッチング・オーバーレイ、同一試料の異なる処理による測定の比較、ドリフト補正などの測定データ処理を行うソフトウェアの開発を行い、データの評価・解釈が容易となるような環境を構築する。さらに、磁気シールド性能向上のために、簡易磁気シールドをPCパーマロイ磁気シールドの外側に配する。磁場データから磁化分布を計算するインバージョンソフトウェアの開発も行う。研究成果に向けては、鉄マンガンクラストの測定を最優先とするが、そのほか各種岩石薄片試料を用いた測定とその解釈を研究分担者と協力して進める。
|