(1)2016年6月27日から7月2日にかけて実施した海洋研究開発機構「新青丸」によるKS-16-J08回収航海において、1年間鳥島はるか東方沖に設置していた水圧計9台と広帯域改訂地震計1台を回収した。水圧計1台を除いて全て全期間順調に記録されていた。2015年9月2日にアレーのわずか50km北東の小笠原海溝近傍で起きたM6.1の衝上断層地震とその余震群の記録には海洋レイリー波エアリー相が卓越することを確認した。 (2)2014年から2015年までの10か月間、新規開発された水晶式加速度計を宮城県沖の3400mの海底に設置して測器の試験観測を行った。記録から日本海溝斜面を駆け上る海洋ボア現象50イベントを検出し、結果をJGR-Oceansに発表した。 (3)2015年5月2日の鳥島近海地震(M5.7)は地震の規模の割に津波が異常に大きいいわゆる津波地震であった。2014年5月から2015年5月にかけて青ヶ島東方沖に設置した海底圧力計アレーは震央からわずか100kmに位置し、この地震波と津波を見事に記録していた。この記録を解析し、波源域がスミスカルデラに一致すること、地震波から求めた津波波高では観測を全く説明できないことを示し、地震波を励起せずに津波だけを生成するエレメンタリーな断層型が存在すること指摘し、結果を論文にまとめてNatureに投稿した。 (4)青ヶ島東方沖アレー記録からM2内部潮汐をスラントスタック法により抽出し、海洋潮汐を取り込んだJCOPE海流モデルと比較して、位置的・規模的に両者の良い一致を見た。結果は2017年JpGU-AGU大会で発表の予定。同じく青ヶ島東方沖アレー記録から海洋重力波をスラントスタック法により海洋長周期重力波を抽出し、到来方向を逆伝播させることにより波源域は南米太平洋岸にあることを確認した。結果は2017年JpGU-AGU大会で発表の予定。
|