研究課題/領域番号 |
25247075
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 薫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90251496)
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研究分担者 |
杉本 憲彦 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 准教授 (10402538)
木下 武也 国立研究開発法人情報通信研究機構, 統合データシステム研究開発室, 研究員 (20648638)
渡辺 真吾 国立研究開発法人海洋研究開発機構, シームレス環境予測研究分野, 分野長 (50371745)
三浦 裕亮 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70415991)
高麗 正史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80733550)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 重力波 / ロスビー波 / 物質循環 / 成層圏 / 中間圏 |
研究実績の概要 |
・昭和基地のMFレーダーによる中間圏の15年観測データを用いて重力波の季節変化および年々変化に関する研究を行った。冬季だけでなく夏季にも重力波活動度のピークが見られること、その年々変化は亜熱帯対流活動と関連があることを突き止めた。また、PANSYレーダーとNICAMを組み合わることにより、極域でしばしば出現する多重圏界面が重力波によると示した研究を論文出版した。 ・重力波解像GCMのシミュレーションデータを用いて南半球中緯度の重力波の起源と間欠性の研究を行った。主要起源が前線や中緯度ジェットであること、間欠性は下層大気では領域依存性が高いが中間圏では緩和されることなどがわかった。また、同データを用いて、成層圏・中間圏における順圧・傾圧不安定を詳しく調べていたところ、ロスビー波と重力波の協働という新しい知見を得た。重力波はロスビー波に対しパッシブに振舞うと考えられていたが、重力波強制は中緯度中間圏に渦位極大を作り、その結果、極大を解消するように、東向きと西向きのロスビー波対が発生している様子が明らかとなった。 ・全球高解像度大気モデルJAGUARを用いて再現される大気内部重力波のモデル鉛直解像度依存性に関する論文が出版された。 ・Kinoshita and Sato (2013a,b) の理論による3次元波活動度フラックスと残差流、及び、Sato et al. (2013)で提案した拡張ヒルベルト変換を計算するコードの改良を行い、web上で試験公開を開始した。 ・理論研究として、重力波放射が総観規模の流れにもたらす影響についても調べた。また、簡略化モデルを用いて、自発的な重力波放射が高低気圧渦で非対称性を持つことを理論と数値実験の両方で示し、渦の併合過程においても確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
9で述べたように、着実に成果を上げることができた。特に、成層圏・中間圏における順圧・傾圧不安定に関し、重力波とロスビー波の協働という新しい知見と理解が得られた。これは重力波強制がどのように不安定な場を作り出すかという視点において、詳細な力学メカニズムを明確化し、中間圏におけるロスビー波の発生が必然であることを示した画期的な成果である。米国気象学会の学術誌に掲載され高い評価を得た。このほか、モデルの鉛直グリッド間隔がシミュレートされる重力波の運動量フラックスに大きく影響することなど、重力波の全球モデルによる再現に関するインパクトの高い結果を得た。また、発表まで至っていないが、全大気モデルを用いた中間圏重力波強制とその役割に関する定量的な解析も進め、ロスビー波との協働に関する更なる知見も得られつつある。さらに、2015年10月よりPANSYレーダーのフルシステムによる全群観測を開始し、2016年9月までのノンストップ1年連続観測をいう前代未聞のハイパワー大型大気レーダー観測を達成した。論文投稿準備中であるがPANSYレーダー観測データと高解像度モデルを組み合わせた研究により半日周期波動に関する新たな解釈も得られつつある。また、各国に呼びかけ、2016年1~2月には、PANSYレーダーフルシステム観測を含む大型大気レーダー観測網による南北両半球結合に関する国際共同観測を計画し、実施した。
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今後の研究の推進方策 |
11で述べた未発表の研究を論文化すると共に、PANSYレーダー観測データとモデル計算を組み合わせた研究を進め、極域中層大気の力学に関する定量解析を進める。さらに、非定常な循環形成の課題に関する研究については完成度を高め、論文出版を行なう。
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