研究課題
通常の2つの局からそれぞれ送受信し表層流を観測するシステムから、1局のみ送信、2局で受信する新たな海洋レーダシステムの開発を行った。このシステムを作成するため、新たな受信機を作成すると同時に、他局から発信された送信波を受信し受信機内で送信波の疑似信号を作り出すシステムを開発した。この新たな受信システムを山口県相島局に導入し観測を開始した。しかし、相島局では海岸からの距離が遠いためか、送信信号を受信し疑似信号を発生させることはできたが、海から反射してくる電波を受信することができなかった。そのため、新しい受信システムを長崎県対馬局へ移動させ、相島局から送信、対馬局で受信させた。その結果、ノイズが大きいものの海面から散乱された電波を受信することに成功した。ノイズの影響を除去するため新たなフィルターの導入等を試みたが劇的な改善がないことから、受信システム内で疑似信号をデジタルとして発生させるのではなく、相島局からの送信電波の情報から、全く同じタイミングで対馬局内で送信信号を発生させる装置の開発を開始した。対馬局の送信アンテナを相島局からの送信波の受信アンテナとして使うための改良、相島局からの送信波を受信し全く同じタイミングで送信波を発生させるソフトウェア-およびハードウェア-の開発を行い、それが正常に稼働し2ヶ月は連続で動くことを確認した。また、これまで各局で送受信したデータの再処理を行い流速データの高精度化をおこなった。
3: やや遅れている
1局送信、2局で受信する新たな海洋レーダシステムのハードウェア-、ソフトウェア-の開発は、受信波に想定していた以上のノイズが含まれてこれへの対応により少し遅れ気味であったが年度内に完成させ観測を開始できた。一方、この新たな海洋レーダシステムの精度検証のために予定していた漂流ブイとの比較検証は、海洋観測を実施する時期に送信する無線機の故障により比較データを取得することができなかった。以上のことから本研究は当初の予定よりやや遅れている。
対馬暖流の分岐流である対馬暖流第二分枝が存在するのは、対馬局から約150km沖合とされている。ノイズレベルが高い状態では距離の離れた場所からの電波を受信することが難しいことから混信電波除去を効果的に行うシステムの改良を進め、対馬局から150km以上沖合のデータを連続的に蓄積できるようにする。また、新たなシステムによるデータの精度検証を行うため、漂流ブイを海洋レーダ観測域に流し現場の流速と海洋レーダにより観測された流速の比較を行う。
すべて 2015
すべて 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件)