研究課題/領域番号 |
25247079
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
徳丸 宗利 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (60273207)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 太陽風 / 惑星間空間シンチレーション / 太陽圏 / 宇宙天気 / 太陽ダイナモ |
研究実績の概要 |
本研究課題では、近代的な宇宙空間の観測が始まって以来最も低い太陽活動サイクル24において、太陽から吹き出す太陽風がどのような分布をしいて、それが如何に発展するかについて名古屋大学の惑星間空間シンチレーション(IPS)観測から明らかにし、太陽ダイナモ活動が異常に低下した時の太陽圏の応答について知見を得ることを目指している。今年度は昨年同様IPS観測を連続的に実施し、太陽風速度および密度揺らぎの全球的分布を決定した。今年の観測結果は昨年までとは異なり、南北極域に高速風が出現し、極小期に近い分布を示した。但し、太陽風分布は過去の極小期と比べ複雑であり、これは今サイクルの特徴と考えられる。 我々は太陽風速度Vとコロナホール面積Aの関係をIPSデータとポテンシャル磁場モデルを使って解析した。その結果、AとVの間には良好な正の相関関係があることがわかったが、その傾きは先行研究とは大きく異なっていた。また、極大期を除いてAとVの相関は良好であり、傾きにも有意な長期変動は見られなかった。さらに、我々はAの1/2乗とVの間にAとVより高い相関が見られることを発見した。このことは太陽風加速機構に関して重要な示唆を与ると共に、宇宙天気予報の精度向上につながる成果である。また我々はIPSデータのMHD IPS Tomography解析結果を飛翔体観測結果に最適化することで、太陽風速度と密度、温度に関する関係式を決定した。ここで得られた結果は前述したAとVの関係と同様に太陽風加速機構について重要な示唆を与える。さらに我々は、コロナホール分布の長期変動についても研究を行い、コロナホール分布が黒点の蝶形図と同様のパターンを示すことをつきとめた。この成果に基づいて太陽黒点観測からコロナホール分布を推定することが可能となり、先述した成果と合わせて宇宙天気予報の精度向上をもたらすものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、次の極小期に向けた太陽風構造の変化を明瞭に捉えることができた。また、コロナホール面積と太陽風速度の関係、コロナホール分布と太陽黒点分布の類似性、MHD IPS tomography解析による密度・温度モデルの最適化などの研究成果が出版できた。さらに今年度12月のUCSD IPS Workshopで知り合った研究者にIPS観測データを提供し、その結果が論文として出版された。この他に早急に論文としてまとめたい研究成果が得られている。以上のことから、本研究課題の進捗状況は計画を上回ると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
IPS観測システムを調整しながら連続的なデータ取得を行い、次の極小期にむけた太陽風構造の発展を明らかにする。得られた研究成果をできるだけ多く論文としてまとめて、学術誌に投稿・出版する。また国内外の研究会に積極的に参加し、研究成果の発信に務める。 本研究課題は今年度で終了するが、次の極小期が来年から始まろうとしている。次の極小期は、サイクル23/24極小期と同程度またはより一層太陽活動が低下すると予想され、マウンダー極小期の謎を解明する絶好の機会が到来する。よって、次の極小期における太陽風の解明を目指した研究課題を今年度に申請したい。新たな研究課題においても本研究課題で用いたIPS観測システムは有効な研究設備となるので、同システムの性能をさらに改善しつつ新しい研究課題に活用してゆきたい。また海外でもIPS観測が活発になっているので、新しい研究課題では海外研究者とより密接な連携を行うようにしたい。
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