本研究では、近代的な宇宙空間の観測が始まって以来最も低い太陽活動であるサイクル24において、太陽から吹き出す太陽風がどのような空間分布をしていて、それが時間とともに如何に変化するか、という点を惑星間空間シンチレーション(IPS)観測から明らかにして、太陽ダイナモ活動が異常に低下した時における太陽圏の応答に関する知見を得ることを目指している。今年もIPS観測を連続的に実施し、太陽風速度および密度ゆらぎの全球的分布を決定した。昨年に南北極域に高速風が出現したことが観測されたが、今年の観測からもほぼ同様な結果が得られた。これにより太陽風は次の極小期に入ったことが確認できた。ただし、太陽風の分布はサイクル22/23極小期に比べ複雑であり、これは弱い太陽活動における太陽風の特徴の一つと考えられる。 我々はIPS観測から得られた太陽風速度と密度ゆらぎの関係を調査し、速度が350km/s以下の太陽風(超低速風)において密度ゆらぎが顕著に低下している事を発見した。密度ゆらぎの大きさは密度の指標であり、観測結果は超低速風の低密度化を意味する。従来、太陽風の速度と密度は逆相関の関係にあり、超低速風は高密度と考えられてきた。本研究からは、サイクル23から24にかけて高速風のように低い密度を持つ超低速風の面積が顕著に増加していることが明らかとなった。ここで、この変化は一様ではなく太陽活動周期に伴う変化も重畳している。この観測結果は地球軌道付近の飛翔体観測データとも一致していた。太陽磁場観測データのポテンシャル磁場解析を行ったところ、低密度の超低速風の流源は高密度の超低速風に比べ磁束管拡大率が小さく、磁場極度も弱いことがわかった。この事から、低密度の超低速風はサイクル24において発生が増加しているpsuedo-streamerと密接に関係していると考えられる。本成果はJGR誌に投稿し、受理された。
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