研究課題/領域番号 |
25247083
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井龍 康文 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00250671)
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研究分担者 |
佐藤 時幸 秋田大学, 工学資源学研究科, 教授 (60241668)
松田 博貴 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (80274687)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 第四紀 / サンゴ / サンゴ礁 / 琉球列島 |
研究概要 |
平成25年度は,沖縄本島本部半島および古宇利島で3孔(Hole 4A,Hole 4B,Hole 4C),与那国島(Hole 5A,Hole 5B,Hole 5C)で3孔の掘削を行った. Hole 4Bは,古宇利島の中央よりやや北に位置する同島で最も標高が高い地点から琉球層群を掘抜き,基盤岩(中生代付加帯堆積物)に達した.同地点は,琉球層群堆積時にはこの一帯で最も標高が高く,浅海相が断続的に堆積したと予想される地点である.今回の掘削により,何層ものサンゴ石灰岩が不連続面を挟んで堆積していることが確認された.一方,本部半島北部のHole 5Aおよび古宇利島西岸のHole 5Cは,琉球層群堆積時には低海水準時に浅海相が堆積した地点である.両地点の掘削により,目標とする浅海相のサンゴ石灰岩を採取することが出来た.なお,両地点の掘削は琉球層群の下位に位置する呉我層に達したが,同層は事前予想よりはるかに厚く,基盤岩には至らなかった. 与那国島で掘削を行った3点は,琉球層群堆積時には浅海相と沖合相が交互に堆積した地点である.いずれの地点でも,琉球層群を掘抜き基盤岩(八重山層群)に達した.目標とした浅海層のサンゴ石灰岩は,非常に良い状態で採取され,掘削は成功と評価される.しかしながら,与那国島の琉球層群は断層で断たれてブロック化しており,ブロック間での岩相対比が困難であるため,地質図が公表されていない.このため,掘削試料間の岩相対比は現時点では不明であり,今後の検討課題として残った. 以上の堆積物の解析には,新第三紀の終盤~現在の北西太平洋における海洋環境変動や第四紀および現在の琉球列島サンゴ礁における生物相および堆積相の知見が欠かせない.このため,これまでに取得していたデータを解析し直し,論文としてまとめ,国際誌に投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度には,沖縄本島本部半島および古宇利島と与那国島での掘削を予定していたが,掘削は順調に進行した.沖縄本島本部半島および古宇利島では,琉球層群が想定より厚かったが,掘削を行った地質調査会社の厚意により琉球層群を掘抜くことができた.全国的なドリラー(掘削技術者)の不足により,掘削の実施時期が遅く,試料の堆積相・生物相の解析時間を十分に取ることができなかった点はマイナスである.しかし,平行して行う予定であった,新第三紀の終盤~現在の北西太平洋における海洋環境変動や第四紀~現在の琉球列島サンゴ礁における生物相・堆積相のデータの再解析と,論文としてまとめる作業は大幅に捗った.この点はプラスである.以上を勘案すると,ほぼ予定通りに進行していると総括される.
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今後の研究の推進方策 |
計画は概ね順調に進んでいるので,今年度は当初の計画通り,科研費を使用してトカラ列島の小宝島で掘削を行う.また,ICDP経費による徳之島での掘削を早急に開始できるようにしたい. 昨年度に沖縄本島本部半島および古宇利島と与那国島で行った掘削によって得られたコア試料の解析は,本年夏から本格的に進める予定である. また,昨年度には沖縄本島の億首ダム建設に伴って掘削されたコア試料の観察を行い,堆積相および生物相に関する詳細なデータを取得したので,これらを早急にとりまとめて,論文として公表したい.ただし,億首コア試料からは石灰質ナンノ化石が産出しなかったので,ストロンチウム同位体比年代を測定する必要がある. 以上が達成できれば,平成27年度~28年度の掘削試料に関する国際共同研究へとスムーズに移行することができ,本研究の目的が達成できると思われる.
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