研究課題
本研究(COREF計画)は,琉球列島をフィールドとして第四紀気候変動に対するサンゴ礁およびサンゴ礁生態系の応答の解明を目的とするプロジェクトである.本科研費により,2013年度には与那国島と本部半島・古宇利島での,2014年度には小宝島での掘削が完了した.2015年には,国際陸上科学掘削計画(ICDP)の経費を用いて,徳之島で5孔の掘削を行う予定であったが,2016年度中に順延になった.COREF計画推進のためには,琉球列島の島々の地表に分布する第四紀サンゴ礁性堆積物(琉球層群)の層序を確立し,それらの分布を明らかにすること(=地質図を作成しておくこと)が必要である.2000年代に入ってから,琉球列島の多くの島々で,琉球層群の層序が明らかにされたが,まだ空白域が多く残されている.このような状況に鑑み,2015年度には,地表に分布する琉球層群の調査を行った.調査域は,宮古島の西方にある多良間島および沖縄本島の金武町一帯である.多良間島では,琉球層群の層序を確立し,その下位に位置する多良間砂層の年代を石灰質ナンノ化石生層序により,0.45~0.99 Maと決定することができた.しかし,同時期には,すでに沖縄トラフは開いていたはずであり,この石英に富んだ堆積物のソースをどこに求めるかという疑問が残っている.一方,金武町一帯の琉球層群の調査により,徳之島から沖縄本島南部に分布する琉球層群の調査がほぼ完了し,全域に共通する統一層序を確立することができた.2015年9月には,藻類化石の専門家を集めて,「第11回国際化石藻類学会」を沖縄で開催した.参加者は,日本を含む55国から13名と少なかったが,本プロジェクトの概要を説明し,これまでの研究成果を議論する予定時間を取ることでき,無節サンゴモの分類やさまざまな時間スケールの環境変動に対するサンゴ礁およびサンゴ礁生態系の応答について,極めて内容の濃い議論を行うことができた.
2: おおむね順調に進展している
予定通り,2013年度には与那国島と本部半島・古宇利島の掘削が,2014年度には小宝島の掘削が完了した.2015年度に実施すべき徳之島での掘削は,1年ずれ込んでしまったが,2016年に行う予定であった地表踏査を前倒しで実施し,2013年度および2014年度の掘削試料のルーティン分析も順調に進行している.よって,研究計画は概ね順調に進んでいると総括できる.データの取得と同時進行で進めるべき必要がある研究成果の公表に関しては, 2014年度には3編の,2015年度には4編の論文が国際誌に公表されている.多良間島および沖縄本島の金武町一帯の琉球層群の層序に関する論文は,ほぼ完成しているが,コア試料および露頭で確認すべき点があり,これを確認し次第,投稿予定である.さらに,琉球列島におけるサンゴ礁形成史を軸に,地球科学の面白さを後進や市民に伝える単行本の執筆を大手出版社から依頼されており,この執筆を始めた.よって,成果の公表も,概ね順調と考えている.
徳之島掘削:平成28年度は,1年遅れになってしまったが,国際陸上科学掘削計画(ICDP)の経費を用いて,徳之島で5孔の掘削を行なう.平成28年度の後半~平成28年度の前半に,これまでに掘削されたコア試料を集中して分析するサイエンスパーティーを実施する.国際シンポジウム:沖縄トラフが拡大し,琉球列島が大陸から分離した時期,すなわち琉球列島成立の時期は,堆積物を直接採取して決定されている訳ではなく,震探データに基づいて,南部の南琉球で前期更新世,北部の九州西方で後期中新世と解釈されている.しかし,これらのデータは,近年急速に蓄積が進みつつある分子系統による個体群の隔離のタイミングとは必ずしもよく一致していない.しかし,それらのタイミングも,対象とするタクサにより異なっている.そこで,地質学と分子系統に基づく生物地理学によるデータを統合する試みを開始した.2016年9月に開催される,日本地質学会第123年学術大会(東京桜上水大会)では,この問題に関する国際シンポジウムを開催する予定である.研究成果の取りまとめ:平成28年度の前半~中盤には,既存未公表データの論文化を精力的に進めたい.また,本プロジェクトのまとめの一環として,琉球列島のサンゴ礁堆積物のモノグラフを出版する予定であり,昨年度から準備を進めているところであるので,今年度も着実に作業を進めたい.
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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