研究課題
本年度は、海洋セッティングの異なる南大西洋ブラジル沖、トンガ海溝および上甑島貝池で野外調査を実施した。南大西洋では海底の様子を観察しながら、海底堆積物を直上水とともに採取した。日本の周辺とは異なり、有孔虫軟泥を主体とする貧栄養な堆積物が多く、海底面からかなり深くにまで酸素が到達している様子であった。得られた試料は有機物分析、メタゲノム解析、有孔虫分析を行うために陸上の研究室に持ち帰り分析を進めている。トンガ海溝では世界で二番目に深いホライゾンディープにおいて観測を行った。研究協力者とともにフルデプスマイクロエレクトロードを用いてin-situで酸素フラックスを計測した。ホライゾン海淵では世界初の計測となった。また、深海カメラランダーを用いて、海底の様子を映像で観察するとともに、不撹乱海底堆積物を採取し、分析を進めている。予察的なメイオベントスの群集解析では、多様で豊かな生物群の存在が示唆されている。甑島では有孔虫試料を得るために湖底堆積物を採取した。底生有孔虫などの石灰化生物を対象に、環境を制御した飼育を行うために、さまざまな環境因子を制御できるケモスタット水槽を整備した。本年度はpCO2を制御して底生有孔虫を飼育し、石灰化時のpH変動を観察した。また本年度は初年度であり、研究の根幹を担う深海顕微鏡の制作を行った。当初は、平成25年度内に完成し、平成26年度に現場観測に投入する予定であったが当初想定していた設計では解像度の不足が生じたため、撮影方式などの再検討を行った。平成25年度中に、耐圧容器内で作動する小型デルタロボットを製作するとともに、顕微鏡レベルの画像をモザイク撮影する手法を採用した仕様を策定し、作成に着手した。平成26年10月に試作品が完成し、室内試験を経て、平成26年12月完成した。
2: おおむね順調に進展している
深海顕微鏡の製作が遅れたため、繰越しを行い完成させた。野外調査、試料採取、試料の分析やケモスタットの確立は順調に進んでいる。以上のことから現段階では概ね目標を達成していると考えられる。
当初計画に則って研究を推進する。平成26年度においても、様々な海洋セッティングにおける堆積物―水境界の動態把握を念頭に、相模湾や干潟などの野外調査を実施する。現場における画像観察や環境観測をすすめる。特に、完成した深海顕微鏡の実地利用をはじめ、安定した観察につなげる研究計画を立てている。また、ケモスタットを用いた室内飼育実験を進め、生物が記録する環境情報の評価を進める。すでに得られているデータの解析も進めることで、着実に成果に繋げていく所存である。
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