研究課題/領域番号 |
25247089
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久保 友明 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40312540)
|
研究分担者 |
肥後 祐司 公益財団法人高輝度光科学研究センター, その他部局等, 研究員 (10423435)
上原 誠一郎 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70158773)
金嶋 聰 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80202018)
加藤 工 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90214379)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 深発地震 / 反応と流動 / 高温高圧変形実験 / 多点AE測定 / 放射光X線その場観察 |
研究実績の概要 |
放射光X線AE6-6システムの開発:変形高圧装置(D-DIA)と放射光単色X線、多端子AE測定システムを組み合わせて、約8GPa, 700℃までの条件で、反応と流動、剪断不安定現象を同時その場観察するシステムの構築がほぼ完了した。圧電素子の生存率、電気的ノイズ、試料セルの弾性波速度測定、AE波形の自動解析など多くの問題に取り組み、SPring-8および九州大設置の変形装置ではほぼルーチンに実験を行うことが可能となった。 アンチゴライトとカンラン石2相系における単純剪断変形および脱水と剪断不安定化の解明:上記システムの確立によりAEの震源位置を200-300ミクロン程度の精度で決定することができ、AEが試料から出ているのかどうかについて正確な議論が可能となった。比較で行ったフォルステライト燒結体の常温加圧時の比較的低圧下では試料から多数のAEが発生したが、アンチゴライトおよびカンラン石との2相系では、常温加圧時、昇温時、変形時、変形脱水時のどの段階においても試料からのAEはほとんど観察されなかった。回収試料には変形が局所化した断層状の組織が見られるが、AEを伴わないことからstable slipが起こっていると考えられる。 高圧下における反応と流動、剪断不安定化プロセスの系統的理解に向けて:アンチゴライト以外の物質において、部分溶融と剪断不安定化に関する予備的実験、シリカや斜長石など海洋地殻構成物質の準安定反応の検討を行った。前者は固液2相系の剪断不安定化を系統的に検討する上で、後者は準安定相の出現も含めた高圧反応プロセスの詳細を検討する上で重要である。また岩石流動に関わる多相系の粒成長カイネティクスの検討、(稍)深発地震の震源位置と波形解析、スラブ温度構造のモデリングなどから(稍)深発地震発生と温度やフルイドとの関係性を考察した。 関連する学会および国際誌においてこれらの成果を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射光X線AE6-6システムおよびAE波形の解析手法の開発はほぼ完了し、当初の予想以上の精度と簡便さでAE震源位置を決定できるシステムが構築された。二次元回折を取得するためのアンビルの形や材質にさらなる工夫が必要である。このシステムを駆使し、アンチゴライトおよびカンラン石との二相系の純粋剪断変形場において、圧力や昇温速度、脱水速度、2相量比などを変化させて一通りのデータの取得に成功したことも評価できる。これらの成果に関して論文執筆や国際学会での発表による成果報告が急務である。またシリカや斜長石の高圧下での準安定反応およびそのカイネティクスに関する成果も得られその一部は国際誌に論文として受理された。スラブ反応とスラブ変形の相互作用では準安定な反応も重要な役割をする可能性があり、そのメカニズムとカイネティクスの検討は基本的に重要である。(稍)深発地震の地震学的研究および天然のかんらん岩の蛇紋石化プロセスに関する鉱物学的研究との相補的な議論も継続的に行われ、それらは実験結果の解釈、新たな実験条件のデザインなどにフィードバックされている。これらのことからおおむね当初の計画通りに研究が進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
放射光X線AE6-6システムの開発と純粋剪断変形場におけるアンチゴライト脱水の剪断不安定化の可能性について、これまでに得られたその場観察実験データの解析結果を整理し、国際誌に論文を投稿する。実験技術的には、10GPaを超えるより高圧下での実験に向けて、二次元X線回折取得用のアンビルの改良が求められる。またこれまでの純粋剪断変形場では、温度、圧力、脱水速度を変化させてもアンチゴライトおよびカンラン石との2相系において明確な剪断不安定化現象が確認できなかった。今後は単純剪断変形を実現できる実験セルを新たに開発し放射光X線AE6-6システムと組み合わせることで、単純剪断変形場においてアンチゴライトおよびその脱水が剪断不安定化を引き起こす可能性を検討する。さらに本研究で開発された放射光X線AE6-6システムを用いて、これまでのアンチゴライトの脱水反応に加え、深部スラブ物質に関連したより幅広い非平衡反応や低温クリープに着目し、塑性流動領域において剪断不安定化を引き起こす原因について系統的な検討を続ける。高圧変形場における脱水の有無や体積変化を伴う固相反応の有無が剪断不安定化とどのように関連しているのか、放射光X線AE6-6システムをより幅広い温度圧力条件や多様な反応に適応できるよう開発を行いながら実験を行う。
|