研究課題
(1)太陽系始原物質試料の分析:約30種類のCM炭素質隕石試料に対し、体系的な物質分析および分光分析を行った。1.バルク試料(1㎝程度)の三次元CT解析と反射スペクトル解析、2.微小試料に対する放射光X線回折実験、3.粒度を変えた反射スペクトル測定を行った。昨年度までにすでにすべての隕石について、電子顕微鏡を用いた岩石鉱物学的分析は行っている。以上の解析結果を統合し、水質変成度最小の試料を特定し、CM隕石母天体における初期水質変成過程を調べた。また、CT解析から、CM母天体において衝突を受けた試料を特定し、CM母天体における衝突変成過程について、その衝撃圧、衝撃温度、鉱物変化について解析を行った。(2)大気遮断の含水炭素質隕石の加熱実験の試み:昨年度まで継続的に行った含水炭素質隕石の加熱実験の結果から、加熱実験後のサンプルに対する吸着水や復水の効果が無視できないほど大きいことが明らかになった。そのため、本年度と来年度で、加熱実験後の試料を大気に触れさせずに(大気遮断)、反射スペクトル測定や含水量測定が可能になるよう実験方法の抜本的な改良を行うことにした。本年度は、加熱サンプルを大気遮断で反射スペクトル測定用サンプルホルダと水分析用サンプルホルダに分取する方法を確立した。この実験装置を用い、29年度に実際の含水炭素質コンドライトを用いた加熱実験を行い、C型小惑星における加熱脱水の効果をより正確に調べる予定である。
2: おおむね順調に進展している
太陽系始原物質試料の物質分析および分光分析ともに順調に分析が進み、新しい知見が得られてきているため、研究計画は順調に推移している。
1. 太陽系始原物質試料の物質分析に関しては、ほぼ分析が終了したので、結果を取りまとめ論文化する作業を開始する。2. 分光分析に関しては、昨年に引き続き、炭素質隕石の分光分析を系統的に進める。CMタイプの分析はほぼ終了したので、来年度はCRタイプの隕石の分光分析を進める。また、大気遮断の含水炭素質コンドライト隕石の加熱実験を遂行する。
すべて 2017 2016
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Space Science Reviews
巻: - ページ: -
10.1007/s11214-016-0289-5
Geochim. Cosmochim. Acta
巻: 187 ページ: 195-217
10.1016/j.gca.2016.05.011