研究課題
海底堆積物の詳細な年代測定は通常,炭酸カルシウム殻化石を用いて行われてきた。しかし,世界の海底堆積物の約半分はこの炭酸カルシウム殻化石がほとんど含まれておらず,いまだ年代決定は容易ではない。そこで本研究では,堆積物中に含まれるアミノ酸の放射性炭素年代を用いた年代測定法を構築することを目的とした。まず様々な実験法を試した後,天然試料中から抽出された個々のアミノ酸を単離・精製するためには,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分離と分取コレクターを用いた単離が最も適切であることを明らかにした。しかしアミノ酸標品を用いた実験によると,単離されたアミノ酸にはまだカラム・ブリードに起因する汚染物質が含まれている。それらを取り除く精製過程として再結晶化法が有効であることを明らかにした。一方で,精製されたアミノ酸量は通常微量であるため,100 μgC以下での微量放射性炭素年代測定は必須である。そのためにバックグラウンドを0.5 μgC以下に下げるなど,微量放射性炭素年代技術を確立した。これら新規に開発した技術をもとに,年代があらかじめわかっている各種天然物(動物骨等)中からアミノ酸を単離・精製し,その放射性炭素年代測定を実施した。測定結果は,予測された年代と極めて良い一致を示し,この方法論が天然物の年代測定に応用できることを示した。以上本研究では,未知堆積物試料への応用には至らなかったものの,堆積物中のアミノ酸の単離・精製,そしてそれに引き続く放射性炭素年代測定の技術を確立することに成功した。この方法論は,今後の古気候変動研究の下支えとなり,古気候研究の発展を促す起爆剤となるだろう。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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