研究課題
基盤研究(A)
プロトタイプジャイロトロンを用いて、25年度前半の準備研究で得ていた200 kW以上の出力に続き、本研究を開始した25年度後半にはビーム電流を増大させて出力の更新を目指し、234 kWという最高出力を達成した。この結果、設計計算の妥当性を実証するとともに、サブテラヘルツ帯高出力ジャイロトロンにおいて、高効率発振を実現する目途が得られた。その後、発振パルス幅の増大実験を実施した。実験を継続して、次第にパルス幅を増大し、最長30μsまで伸張した。この間、単にパルス幅を伸ばすだけではなく、発振パルス中の出力安定性、パルス毎の再現性が最もよくなる条件を探索し、26年度に製作するジャイロトロン設計に対して有用な知見を得た。以上の成果を国内外の学会において発表した。つぎに、最終的に300 kWの長パルス発振を実現するため、共振器半径を大きくしてより高次のモードで発振するジャイロトロンの予備設計を開始した。しかし、あまり高次モードにすると発振の安定性が損なわれる恐れがある。この防止のため、プロトタイプジャイロトロンで得られた安定性を保持するための知見が極めて有用である。0.3 THz帯のジャイロトロンで発振効率30%以上が得られれば、学術的意義は大きい。このために最適化した電子銃の設計にも着手し、候補モードの1つであるTE18,2モード用電子銃の概略設計を完了した。26年度に製作するジャイロトロンの周波数は、LHDにおけるCTS計測に対して最適化する必要がある。核融合研の連携研究者と共同で検討し、303 GHzに設定した。この周波数に最適化した真空窓を先行整備した。また、LHDにおけるCTS計測に必要な長距離伝送系・ノッチフィルターの検討も開始し、26年度の研究手順を明確にした。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要欄で示したように、目標の200 kW以上を達成している。これからサブテラヘルツ帯ジャイロトロンにおいて安定な高出力発振を得るための設計概念の妥当性が実証できた。これに基づき、当初の予定どおり、実機ジャイロトロンの詳細設計を経て、製作へと研究手順を進めることができる。
当初のロードマップに沿って研究を進める。平成26年度にはCTS計測に適用するための実機ジャイロトロンを製作する。このため、平成25年度後半から開始している設計活動を継続し、早期に設計を完了する。ポイントは、300 kWの長パルス発振を実現するため、共振器半径を大きくしてより高次のモードで発振するジャイロトロンを実現することである。このため、プロトタイプジャイロトロンで得られた安定性を保持するための知見を最大限設計に活かす。0.3 THz帯のジャイロトロンで発振効率30%以上が得られれば、学術的意義は大きい。このために最適化した電子銃も新たに設計する。ジャイロトロン製作後動作試験を行い、基本動作を確認する。CTS計測には、光源とともに伝送系が必要であり、核融合研で設置済みのコルゲート導波管を使用予定である。平成26年度は、コルゲート導波管の予備管を用いて、0.3 THz帯の伝送試験を行う。また、核融合研のLHD装置において、CTS実験に対するノイズ源である電子サイクロトロン放射(ECE)強度の測定を試みる。さらに、受信系の保護に不可欠のノッチフィルターの検討に着手する。これには、平成26年度、福井大学に招聘するロシア応用物理学研究所のPetelin教授にも設計検討の協力を求める。現時点で、当初計画の再検討や変更する必要はない。27年度以降は、26年度の結果に基づき、ジャイロトロンのさらなる高出力化試験、伝送系の設計検討、試験を進めて、LHDにおいてCTS計測装置を構築するための基盤を確立する。
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