研究課題/領域番号 |
25247096
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮永 憲明 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 教授 (80135756)
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研究分担者 |
村上 匡且 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 教授 (80192772)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 広帯域レーザー / プラズマ / 回折格子 / パルス圧縮 / イオン加速 |
研究概要 |
プラズマ・ブラッグ・グレーティングを生成させるのに必要な超短パルス広帯域高出力レーザーを構築中である。広帯域光パラメトリック増幅の前置増幅部に関しては、その励起源であるサブピコ秒増幅器について、フォトニック結晶ファイバーを用いたチャープパルス再生増幅器を新たに考案し、パルスエネルギー>0.25mJ、繰り返し1~10kHzを達成した。また、光パラメトリック増幅の高出力化に向けて、10ns YAGレーザーの2倍高調波を誘導ブリュアン散乱により圧縮する手法を導入し、パルス幅<200ps、効率>50%、パルスエネルギー>100mJ、繰り返し周波数10Hzを達成した。また、広帯域光の分散制御については、回折格子対とアフォーカル凸レンズ対による4f光学系とフーリエ変換面に設置した1次元液晶位相変調器の組み合わせによって、ファイバー増幅器に起因する高次分散の補正を可能とした。 イオン加速の理論解析に関しては、2種イオン混合クラスターを使ったクーロン爆発による単色効率増大に関する計算を進めた。半径依存性を持つクラスターを球対称1次元粒子シミュレーションで計算を行なうことによりエネルギースペクトルを定量的に求めた。単一イオンのみから構成されるクラスターを用いれば、実際には高い単色化効率は期待できないことが予想される一方で、2種類のイオンを混合すると、ある特定の密度プロファイルで極めて高い単色化現象が起こることが期待される。これまでの計算の結果では、総プロトン数の約90%が最大エネルギーの1~2%程度のエネルギーバンド内に収まるだけでなく、全エネルギーの40%がこれら単色プロトンの運動エネルギーに変換されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に関する当初計画では、超短パルス広帯域高出力レーザーの光パラメトリック主増幅部を試験し、平板ターゲットのクーロン爆発によるイオン加速までを予定していたが、レーザー部の安定性が不十分であったために、その対策に集中した。結果として、光パラメトリック増幅励起源の種光の安定性改善について、ファイバーチャープパルス増幅システムの改良、0.25mJチャープパルス再生増幅器とサブピコ秒パルス圧縮、サブナノ秒>100mJレーザーの構築が進んだ。 イオン加速の理論解析に関しては、 (1)達成可能なイオンの最大エネルギー (2)イオンのエネルギースペクトル (3)単色化効率(最大イオンエネルギーの1%エネルギーバンド内に含まれるプロトンの総エネルギー/全イオンの総運動エネルギーとして定義)等の重要な物理ファクターを、(A)クラスターの半径 (B)構成要素(C)密度混合配位 (D)レーザー照射強度 (E)パルス幅をパラメータとして表式化し、比例則に関して定量化を図るとともに理論モデル構築をおこなった。また、上記の予備計算は、1次元球対称という理想化された状態の下での、しかも非相対論領域における粒子シミュレーションの結果であったが、実際には、全ての2粒子間のクーロン相互作用を考慮するN体問題を解く詳細なシミュレーションを相対論的パラメータ領域においても行なう必要がある。 上記のように、実験、理論を合わせて相対的にはほぼ計画通りに進みつつある。
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今後の研究の推進方策 |
超短パルス広帯域高出力レーザーについて、以下のような整備を継続する。レーザーの安定化については、広帯域光パラメトリック増幅の励起レーザーの前段部であるファイバーチャープパルス増幅器のパルスコントラスト向上と安定化を図る。コンパクト化については、広帯域光パラメトリック増幅器のコンパクト化を目指して、励起レーザーに関して、短パルス化の新しい手法を導入するなどの改良を行う。高出力化については、光パラメトリック主増幅器のピコ秒出力を向上させ、その特性を評価する。超広帯域化については、超広帯域種光の整備と部分重水素化KDPを用いた超広帯域増幅試験を行い、最適化を図る。 上記のレーザー整備と併行して、レーザー照射設備を構築するとともに、レーザー・プラズマ相互作用の挙動とプラズマからの荷電粒子やX線などを観測するための計測器を整備する。 超短パルスレーザーとプラズマの相互作用に関しては、これまでの理論の適用領域を電子の振る舞いに対しては相対論領域に拡張するとともに、主要物理量に対する比例則を確立すべく理論モデルを構築する。特に、超高強度レーザーと最適ナノ構造クラスターとの相互作用を多次元の粒子シミュレーションによって解析し、クラスターの初期密度、初期半径、混合比といったパラメータが、イオンエネルギーのスペクトルにどう影響を与えるかを定量的に評価し、最適構造を決定してゆく。さらに、円偏光と直線偏光のイオン加速に与える影響に着目し、レーザーと物質との相互作用に及ぼす影響を詳細に調査する。このように、ターゲット構造とレーザーの照射条件を様々に変えて、単色性を最大限にする最適設計を進める。
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