研究課題/領域番号 |
25248004
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
真船 文隆 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50262142)
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研究分担者 |
安池 智一 放送大学, 教養学部, 准教授 (10419856)
宮島 謙 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (20365456)
田中 秀樹 中央大学, 理工学部, 教授 (40312251)
渡邊 佳英 株式会社豊田中央研究所, その他部局等, 研究員 (70394624)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クラスター / 触媒 / 熱脱離 / 反応 / 吸着 / 酸化 / 還元 |
研究概要 |
本研究は、気相クラスターをツールとして、複数の元素からなる新規触媒の開発を目的としている。平成25年度においては、固体表面に吸着した分子の解析法として確立しているTPD法を、新たに気相クラスターに展開することをめざし、気相クラスターを1000 K程度まで加熱できる装置を開発した。クラスターを徐々に加熱し、加熱後の生成物を連続的に分析することで、生成クラスターの温度依存性から疑似的なTPDプロットを得ることに成功した。 また本手法を気相酸化セリウム(セリア)クラスターに適用し、その熱力学安定性を調べた。セリアクラスターの気相合成では、セリウムと酸素の原子数比が主に1:2かそれよりも酸素が多いクラスターが生成した。これらを徐々に加熱することで、熱力学的に安定なセリアクラスターを調べた結果、CenO2n+とCenO2n-1+が、サイズnによらずに選択的に生成することが明らかになった。TPD測定により、1:2より過剰な酸素は、500 K程度に加熱するとセリアクラスターから脱離することが分かった。つまり、セリアクラスターに対してこれら過剰な酸素は弱く結合し、解離の活性化エネルギーは1 eV以下であることが示唆された。さらにこれらのクラスターを強熱すると、CenO2n-1+よりもさらに酸素が少ないクラスターが生成した。このように、気相クラスターに対するTPD法の適用により、クラスターの熱力学安定性、および構造に対する知見が得られることが分かった。 同様に本手法を銅酸化物クラスターに適用した。気相で生成した銅酸化物クラスターでは、銅と酸素の原子数比が3:2よりも酸素が少し多いものが主に生成する。これらを真空中で加熱することで、銅と酸素の原子数比が3:2に選択的に近づくことが分かった。これらのクラスターは組成特異的に反応し、CO酸化反応およびNO酸化反応を引き起こすことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究の成果として、固体表面に吸着した分子の解析法として確立しているTPD法を、新たに気相クラスターに展開し疑似的なTPDプロットを得ることに成功した。これらの手法により、クラスターに対して、分子がどの程度の吸着力で付着しているかが明らかになる。特に、クラスターに対して、NO, COなどの小分子が物理的に吸着するか、化学的に吸着するか、さらに化学的に吸着する場合は分子状で吸着するのか、解離吸着するのかはクラスターと小分子の相互作用、反応機構を明らかにするうえで重要である。吸着種の脱離の温度依存性から、これらの吸着形態に対する情報が得られる。また、これらの結果と、量子化学計算、分子分光による分子振動数の解析を組み合わせることにより、原子分子レベルで吸着過程を解明することが可能となる。平成25年度のTPD法の開発は、気相クラスターをツールとして、複数の元素からなる新規触媒を開発するにあたってとても大きな進歩であり、当初研究目的は十分に達成されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究の成果を踏まえて、平成26年度には、複数の元素からなる金属クラスターと小分子との反応性の解析を行う。また金属酸化物クラスターと金属クラスターの複合クラスターの熱的安定性および反応性をTPDを用いて明らかにする。前者については、ロジウムなどの貴金属を中心とし、さらに異種の元素を含むクラスタ―について、NOやCOが表面に吸着する形態とそれに関連する反応性を系統的に明らかにする。また後者については、セリアを中心として、セリアと異種の元素との組み合わせで安定性がどのように変化するかを解明する。また、気相クラスターの振る舞いとバルクの金属酸化物表面上のクラスターの振る舞いを比較して、金属と金属酸化物界面の特性を明らかにする。さらに実験結果に対して量子化学計算を組み合わせ、多元素クラスターに対する理解を深める。
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