研究課題/領域番号 |
25248006
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 吉泰 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70181790)
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研究分担者 |
星 永宏 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30238729)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 振動分光 / ラマン分光 / 電気化学 / 表面科学 / 光触媒 |
研究概要 |
京都大学グループでは、高繰り返しピコ秒波長可変OPOシステムを光源とした誘導ラマン散乱分光システムを構築した。このレーザーの1064 nmの出力光をストークス光とし690~990 nm のシグナル光を励起光とし誘導ラマン散乱を観測する方式を採用した。波長の掃引は光変換用の結晶の温度を変化させることにより行なうが、これを自動化するために新たに制御プログラムを開発した。また、スペクトルを高感度に測定するために、ストークス光を光学チョッパーやEO変調器を用いて数100 Hzから1 MHzまでの周波数で強度を変調させ、この変調周波数に同期する励起光強度減少分を位相敏感検出した。その結果、予想通り、1 MHzでの高周波による強度変調が最も良いS/N比を得ることがわかった。これらの最適化についてはシクロヘキサンを対象として行ない、この分子の良好な誘導ラマンスペクトルを得ることができた。 千葉大グループでは、HeNe レーザーを光源とした表面増強ラマン分光法により、以下の成果をあげた。まず、超音波法によるAuナノ微粒子合成により、キャッピング剤のラマンバンドの除去に成功した。次に、電極を窓から離して物質移動が妨げられない条件で、酸素雰囲気下のPtOラマンバンドの測定に成功した。酸素還元活性の低いPt(100)上ではAr下に比べて酸素下でPtOのラマンバンド強度が大幅に増加することを見いだした。一方,酸素還元活性の高いPt(110)上のPtOラマンバンド強度はAr下,酸素下で大差なかった。したがって、酸素雰囲気下のPt(100)上ではO2 + 2Pt → 2PtOの解離反応が促進され,酸素還元反応を阻害していると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の最大の課題であった、高繰り返しピコ秒波長可変OPOシステムを光源とした誘導ラマン散乱分光システムを構築は予定通り進展している。 千葉大グループでは、当初の目的であった金ナノコア粒子の合成が難航しているが、超音波法による金ナノ微粒子合成により、キャッピング剤のラマンバンドの除去に成功しており、当面この金ナノ粒子を用いた表面増強ラマン分光を適用することができる態勢となった。
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今後の研究の推進方策 |
誘導ラマン散乱分光システムの構築がほぼ終了したので、実際の測定対象である金属酸化物にこの方法を適用しながら、さらなる高感度化を図る。具体的な研究対象としては、チタニア単結晶、およびバナジン酸ビスマス微結晶、ペロブスカイト型のBaLa4Ti4O15などをとりあげる。これらの金属酸化物における金属-酸素間伸縮振動を観測し、これがバンドギャップ間遷移による光励起によりどのような変化を示すかを検討する。千葉大グループの作製したキャップレス金ナノ粒子を用いた増強効果についても検討を加える。また、装置的には誘導ラマン散乱分光システムを顕微鏡と組み合わせて、顕微誘導ラマン分光ができるように装置を改良する。 千葉大グループでは、Pt(111)電極上で不純物を含まないPtOのラマンスペクトルを観測し、より定量的な分析を行なうと共に、白金の高指数面への展開を図る。また、引き続き金ナノコア粒子の作製を試みる。
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