研究課題/領域番号 |
25248007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中野 雅由 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (80252568)
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研究分担者 |
久保 孝史 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60324745)
鎌田 賢司 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (90356816)
米田 京平 奈良工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (80734102)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 開殻性 / 非線形光学 / ジラジカル / 開殻一重項 / フェナレニルラジカル / マルチラジカル / 光物性 / 励起状態 |
研究実績の概要 |
本年度は、分担研究者の久保らによりペンタフルオロフェニル基を2,5,8位に導入した誘導体を用い、フェナレニルを基盤とする有機中性ラジカル種の一次元集積体の構築に成功した。極低温においてもスピンパイエルス転移を示さない一次元鎖が得られ、固体状態での二光子吸収測定に資する理想的な材料が得られた。フェニル誘導体との混合系でも理想的な一次元鎖の構築に成功した。創製されたフェナレニル一次元鎖の開殻性と非線形光学(NLO)物性の解明を行うため、π-πスタックしたフェナレニル二量体及び四量体をモデルとして、マルチラジカル因子の分子間距離依存性を理論計算により解析した。その結果最適化構造(実在結晶の面間距離付近)で中間開殻性を示し、積層方向の第二超分極率γ(三次NLO物性の微視的起源)がその領域で顕著な増大を示すことが判明した。これは2サイトモデルから得られた構造特性相関であるy-γ相関に従う結果であり、開殻分子集合系が有力な実在系の候補であることを示唆している。次に、従来の閉殻系でのNLO分子の設計指針の一つであるX-π-X(X = D(ドナー)/A(アクセプタ))系について、我々の開殻性の指針を加えた時の効果を検討するため、p-キノジメタンの環外C-C距離を変えてyを変化させ、一方、両側に荷電を置き分子内電荷移動(CT)を調整したPQM+電荷モデルを検討した。X-π-X系においても中間ジラジカル領域でγが極大を持ち、分子内CTの増加に伴い極大のγを与えるy値及びγの極大値が増大することを予測した。これは、従来の設計指針(X-π-X系)と開殻性に基づく設計指針が相乗的にγのさらなる増大に寄与することを示し、新しいNLO分子系の設計指針となることが判明した。他に高周期典型元素を含む4員環系や遷移金属含有系についても構成元素や置換基による開殻性の変化を通したγの制御が可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実在の開殻分子集合系が創製され、そのモデル計算により、マルチラジカル性と非線形光学効果の相関が解明されてきている。測定の方もレーザーシステムの構築が進み、準備でき次第、測定を開始する予定であり、理論と実験の比較が期待できる。さらに、新しい設計指針として開殻性をもつ分子内CT系を提案でき、開殻NLOの候補分子の探索領域が拡大することが期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
実在の開殻超分子系としてフェナレニル分子からなる一次元開殻分子集合系のマクロな性質である非線形感受率を計算する方法を確立する。また、開殻分子内CT系の増大機構の解明をモデル系を用いて行う予定である。高周期典型元素や遷移金属含有系の解析を進め、さらに非交互縮環系についても検討を開始する推進する予定である。
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