研究課題/領域番号 |
25248010
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩本 武明 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70302081)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 14族元素 / ケイ素 / 結合 / 構造 / 立体配置 |
研究実績の概要 |
(i)反転σ結合を共役系の単位とする分子系の構築 前年度合成に成功した1,3-ジシラビシクロブタン同士が橋頭位で直接連結された共役二量体化合物が紫外可視吸収スペクトルにおいて顕著な温度依存性を示すことを見出し、溶液中温度に依存し容易に構造変化することが示唆された。またアルコールとの反応では1,3-ジシラビシクロブタンの架橋ケイ素-ケイ素結合部分にそれぞれアルコールが付加した生成物が得られることを見出し、この共役二量体のケイ素-ケイ素が高い反応性を示すことを見出した。また、種々の嵩高さのシリル基を橋頭位に持つ1,3-ジシラビシクロブタン誘導体を合成し、置換基の嵩高さで橋頭位ケイ素-ケイ素結合の構造が変化することを見出した。 (ii)特異な立体配置を有する結合を持つ高周期14族化合物の創出 本項目では特異な立体配置を有する高活性結合を持つ分子を安定化合物として合成し、それらの基礎的性質を明らかにすることを目的とした。これまで安定化合物として合成例のないビシクロ[1.1.0]ブト-1(2)-エンのケイ素類縁体(テトラシラビシクロ[1.1.0]ブト-1(2)-エン)を塩基で安定化された形で安定化合物として合成単離することに成功した。そして、X線構造解析および量子化学計算から、この分子はビシクロ[1.1.0]ブタン骨格に極めて歪んだ二重結合をあわせ持つ構造ではなく、ホモシクロプロペニリウムカチオンとアニオンからなる双性イオン構造を持つことを明らかにした。またテトラシラビシクロ[1.1.0]ブト-1(2)-エンが溶液中で骨格異性体との平衡にあることも見出した。ビシクロ[1.1.0]ブト-1(2)-エンは高度に歪んだ二重結合をもつ分子として理論的に研究されてきたが、実験的には観測されおらず、本研究によりビシクロ[1.1.0]ブト-1(2)-エン骨格の構造と電子状態が初めて明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(i)反転σ結合を共役系の単位とする分子系の構築 反転σ結合をもつ1,3-ジシラビシクロ[1.1.0]ブタンを共役単位とする分子が合成可能であること、反転σ結合同士が共役することを見出し、さらに共役系構築のための有用なビルディングブロックとして橋頭位がシリルアニオンになった1,3-ジシラビシクロ[1.1.0]ブタン誘導体が合成できており、順調に研究は進展している。 (ii)特異な立体配置を有する結合を持つ高周期14族化合物の創出 これまで安定化合物として合成例のないビシクロ[1.1.0]ブト-1(2)-エンのケイ素類縁体を塩基で安定化された形で安定化合物として合成単離することに成功してきている。一方、前年度合成したテトラシラビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エンは立体的に高度に保護されているため、その反応性は十分に明らかにできていないが、立体的により小さな誘導体を合成することで解決できる指針が立っており、この項目もおおむね順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(i)反転σ結合を共役系の単位とする分子系の構築 橋頭位がシリルアニオンになった1,3-ジシラビシクロ[1.1.0]ブタン誘導体を共役系構築のための有用なビルディングブロックとして活用して、種々の電子系を橋頭位に導入させた新たな共役系の合成を検討する。また、反転σ結合をもたない1,3-ジシラビシクロ[1.1.0]ブタン誘導体の基本的な反応性を明らかにして、反転σ結合をもつ誘導体の反応性との比較を通じて、反転σ結合の反応性の基本的理解を進める。 (ii)特異な立体配置を有する結合を持つ高周期14族化合物の創出 塩基で安定化されたテトラシラビシクロ[1.1.0]ブト-1(2)-エンの生成機構の解明、およびテトラシラビシクロ[1.1.0]ブト-1(2)-エン二量体のさらなる熱反応性を明らかにする。また、これまでに合成したテトラシラビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エンの精密電子密度解析によりその結合の詳細を明らかにするとともに、より嵩の小さい置換基を持つテトラシラビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エン誘導体を新規に合成し、反応性を明らかにする。
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