研究課題
本研究では、スピン・電荷・構造の大きな自由度をもつ金属錯体分子システムを設計し、これをボトムアップ手法により高度に組織化したサブナノ・ナノスケール構造体を構築することを目的として研究を行った。金属錯体分子システムを集積・階層化することにより、それぞれの金属イオン・分子コンポーネントがもつ電子的特性を協奏的に増幅し、光・電場でその光物性・磁性・誘電性を自在変換できる多機能分子システムの構築を目指して研究を進めた。具体的には以下の2点について研究を進めた。(1) スピンクロスオーバー錯体や電子移動共役スピン転移をしめす双安定性分子を配位結合・分子間電荷移動相互作用・水素結合で集積・階層化し、光・電場で光物性・磁性・誘電性を操作することができる多重物性操作分子集積システムの構築を行った。様々な補助配位子をもちいて電子移動共役スピン転移現象を示すシアン化物イオン架橋鉄-コバルト錯体を合成し、構造・磁気的性質について調べた。いくつかの化合物では、分子間水素結合相互作用によって高次ネットワークを形成していることが分かった。これらの系では電場などによる外部刺激を応用したプロトン駆動物性変換が期待される。(2) 分子中に複数以上の双安定性部位をもつ光により選択的物性変換が可能な多重双安定性分子システムの構築を行った。平面性の高い多座配位子をもちいることで多段階スピンクロスオーバー現象を示すグリッド型鉄4核錯体の構築に成功し、酸化反応により混合原子価錯体を得、光波長選択的スピン転移を見出した。さらに分子素子としての可能性を探るため、配位子の拡張を行い、類似構造を持つグリッド型鉄4核錯体の構築に成功し、得られた化合物の熱誘起・光誘起多段階スピン転移挙動の詳細を調べ、双安定性に関する知見を得た。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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