研究課題
基盤研究(A)
キラルな分子からの蛍光発光には円偏光成分すなわち円偏光蛍光(Circularly Polarized Luminescence, CPL)が観測される。CPL はキラルな分子における左右円偏光の放射確率の違いに起因する現象で、吸収における円偏光に対する非対称性を計測する円二色吸収スペクトル(CD)と同様のキラル構造評価法として研究されてきた。一方で、CPL は将来の3Dディスプレイ技術や不可視インキへの新たな情報埋込技術としても注目されている。本研究では分子会合構造の精密制御技術を基盤とする超分子組織構造を利用する材料設計により、強い発光性と高い発光円偏光度を同時に満たす円偏光発光材料を開発する。キラルなπ共役分子のスタッキングにより形成される超分子組織構造である分子ワイヤーに関して、その増強円偏光発光を検討した。キラルセンターとなるビナフチルユニットに蛍光ユニットを2つ導入した分子1は均一溶液中で円偏光発光を示し、さらにその強度は自己組織化構造の会合形成によって大幅に増強される。条件によって、ナノ微粒子が形成する場合には円偏光度は3倍程度に増強を受け、さらに分子ワイヤー構造を形成する場合には7倍程度まで増強されることが見いだされた。またキラルセンターとしてシクロヘキサン骨格を有する分子2においてはシクロヘキサン骨格と蛍光ユニットとの間に挿入する炭素鎖長に応じて反転した円偏光発光特性が見いだされた。またキラルな分子ワイヤー構造に対してSHEなどの金属配位ユニットの導入を検討した。
2: おおむね順調に進展している
予定していた研究項目についてそれぞれ検討を進めおおむね計画していた成果を得た。分子ワイヤーの形成、その構造同定、蛍光特性評価および金属ナノ粒子との複合化などについて一定の成果を得た。
前年までに得られた成果の再現性やさらにその条件の最適化等は引き続き必要で、円偏光蛍光を支配する因子の解明に向けた学理の探求が必要と考えている。特に分子ワイヤー構造の精密な評価と最適構造構築の条件などの探索、さらに金属ナノ粒子導入による円偏光蛍光の増強効果の検証などは未到達となっている。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 備考 (1件)
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